ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
115 / 115
新世界の章

私達の旅

しおりを挟む
翌日、私とリリア・ツヴァイは、さっそく出発の準備をしていた。

急いでるようにも見えるかもだけど、実際は半年以上ここにいた訳だからね。むしろゆっくりしすぎたくらいだと思う。意識はなかったけど。

「また気が向いたらいつでも来てくれて構わない。メンテナンス永久保証は今後も有効だ」

博士は相変わらず白衣に身を包んで飄々とした感じで私達を見送ってくれた。今の博士の体も、CLS患者となった博士自身の体が基になってるから、殆ど変化することもない。

それに博士自身は、静止衛星軌道上に固定された宇宙船の中にある人工頭脳が本体で、しかも自らのクローンも何体も用意してる筈だった。

ちなみに、今回は忙しいのか顔を出さなかったけど、実は<機械の体の博士>もいるんだ。博士は、二つの体を同時に使って、作業を効率的に進めてる。

本当にすごい人だよ。

すごすぎて、頭がおかしい人だ。

さすがは、私の主人マスターだった人。

リアカーがイニティウムの町長の家に預けたままになってるから、まずはイニティウムに向かう。別に捨てていってもいいんだけど、ここまで付き合ってきたからね。多少は愛着もある。

なんて、人間みたいかな。

リルフィーナの運転するコミューターに乗り、博士に向かって手を振る。

「またしばらくのお別れだね」

「なに。どうせまた二十年もしないうちに戻ってくるよ」



そして数日後。やっぱりリアカーを引きながら、二人で、道路をとぼとぼと歩く私とリリア・ツヴァイの姿があった。今度は西を目指して歩いて、大陸の端に行き当ったらそこからは南を目指すことになってる。

そんな私達の前に、よろよろと歩く人影。

CLS患者だ。

私は拳銃を構え、二回引き金を引いた。

「なんだか変わり映えしない毎日だね」

「だが、それがいい」

目の前には、どこまでも続くかのような道。

私達の旅は、まだ始まったばかりだ。







しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

徒人
2018.11.22 徒人

読み始めは「彼女」「私」などが混ざって分かりづらいな、とは思いました。でも、読み進めるうちに彼女たちの関係性であったり、世界観であったり、様々な部分に魅力を感じ、とても楽しみながら読むことができました。
読みづらかったのは、ただ文体に慣れていなかったからでした。やはり、最近増えている簡易な文体に慣れていたようです。
読み返してみると、読みづらいなんてことは全くなく、逆にこの物語の不思議な世界観を引き立てているように感じました。
読み始めたのは、最近の完結を読み漁っていたからなのですが、他のどの物語よりも素晴らしいものだと感じました。
心の底から楽しめる素晴らしい小説を書いてくださり、ありがとうございました。

解除

あなたにおすすめの小説

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

カタクリズム

ウナムムル
ファンタジー
ある日、世界から突如【死】が消え、生命は【不死】となった。 崩壊するヒエラルキー、加速する食糧不足…。 死者の出ない不毛な戦争が続き、疲弊した各国は代表を選抜する。 選ばれし24人の精鋭は【死の概念】が消失した原因究明のため旅立った。 そして、彼等は知る事となる。 【死の概念】の消失、それは序章でしかなかった、と……。 5章からは「小説家になろうで」でお願いします。 登録コンテンツの【カタクリズム:中編】から行けます。

【完結】異世界で幽霊やってます!?

かずきりり
ファンタジー
目が覚めたら、豪華絢爛な寝室……に、浮かぶ俺。 死んだ……? まさかの幽霊……? 誰にも認識されず、悲しみと孤独が襲う中で、繰り広げられそうな修羅場。 せめて幽霊になるなら異世界とか止めてくれ!! 何故か部屋から逃げる事も出来ず……と思えば、悪役令嬢らしき女の子から離れる事が出来ない!? どうやら前世ハマっていたゲームの世界に転生したようだけど、既にシナリオとは違う事が起きている……。 そして何と!悪役令嬢は転生者! 俺は……転……死?幽霊……? どうなる!?悪役令嬢! ってか、どうなるの俺!? --------------------- ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

冴えない冒険者の俺が、異世界転生の得点でついてきたのが、孤独の少女だったんだが

k33
ファンタジー
冴えないサラリーマンだった、矢野賢治、矢野賢治は、恨まれた後輩に殺された、そこから、転生し、異世界転生の得点についてきたのは、孤独の少女だった!、そして9人の女神を倒したら、日本に戻してくれるという言葉と共に、孤独の少女と女神を倒す旅に出る!

前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
日本でブラック企業に勤めるOL、咲は苦難の人生だった。 幼少の頃からの親のDV、クラスメイトからのイジメ、会社でも上司からのパワハラにセクハラ、同僚からのイジメなど、とうとう心に限界が迫っていた。 そしていつものように残業終わりの大雨の夜。 アパートへの帰り道、落雷に撃たれ死んでしまった。 自身の人生にいいことなどなかったと思っていると、目の前に神と名乗る男が現れて……。 辛い人生を送ったOLの2度目の人生、幸せへまっしぐら! ーーーーーーーーーーーーーーーーー のんびり書いていきますので、よかったら楽しんでください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。