101 / 115
新世界の章
トニー
しおりを挟む
<イニティウム>を目指して歩き始めた私達だけど、ここまでの旅だけでも、博士のところを出てから十年かけて旅してきた。だからペースを上げないとまた十年かかってもおかしくない。
だけど、私達は敢えてゆっくりと歩いた。これまでと同じで、目に映る光景を記録しながら。イニティウムに立ち寄るのだって基本的にはただの<ついで>。どうしても行かなければいけない訳でもないし、急いでメンテナンスを受けなきゃいけない訳でもない。
それでも、これまでのルートは大きく迂回するような形だったのが今回はほぼ最短距離を歩いたので、三年ほどでイニティウムがある地域へと足を踏み入れてたのだった。
そんな私に、<通信>が届く。警告だった。
『許可なき者は、この先に立ち入ることはできません。ただちにこの場を立ち去りなさい。これは警告です。これに従わない場合には、実力を持って対処します』
という内容の。
「う~わ、何? 物騒だね」
警告が発せられたことを伝えると、リリア・ツヴァイがそんなことを口にした。
確かに決して<穏便>とは言えないか。
けれど、このくらいであれば、対応としては普通だと思う。だから私は、きちんと伝えた。
『私は、かつてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の下で運用されていた、識別番号AHM0086LILIATERESAです。博士に面会を求めます』
すると。
『……照会完了。失礼しました。リリアテレサ。おかえりなさいませ』
との返事が。
でもこの対応で分かった。<イニティウム>は、ちゃんと<町>として機能してるって。外敵に備えようとするのは、そこに守るべきものがあるからだって。
そして、私達を迎えたのは、私が知らない<ロボット>だった。
人間そっくりに作られたメイトギアでも、重作業用の耐久性重視で作られたレイバーギアでもない、こう言っては何だけど、まるで<子供の玩具>のような、マニピュレータの先にタイヤを備えた六本の<脚>を持つ、昆虫にも似たシルエットを持つロボット。
『あなたは?』
問い掛ける私に、彼は、
『私は、イニティウムタウンの雑事すべてを担当するロボット、<トニー>と申します。以後、お見知りおきを』
と応えてくれた。
「あなたは、イニティウムで作られたロボットなの?」
リリア・ツヴァイが覗き込むようにして問い掛ける。
「はい、その通りです。イニティウムタウンに暮らすすべての方々の為に働くロボット。それが私です」
トニーの答えに、「へえ」とリリア・ツヴァイは感心したように声を上げた。
「簡単なのだけど新規でロボットを作れるようにまでなったんだ。すごいね!」
だけど、私達は敢えてゆっくりと歩いた。これまでと同じで、目に映る光景を記録しながら。イニティウムに立ち寄るのだって基本的にはただの<ついで>。どうしても行かなければいけない訳でもないし、急いでメンテナンスを受けなきゃいけない訳でもない。
それでも、これまでのルートは大きく迂回するような形だったのが今回はほぼ最短距離を歩いたので、三年ほどでイニティウムがある地域へと足を踏み入れてたのだった。
そんな私に、<通信>が届く。警告だった。
『許可なき者は、この先に立ち入ることはできません。ただちにこの場を立ち去りなさい。これは警告です。これに従わない場合には、実力を持って対処します』
という内容の。
「う~わ、何? 物騒だね」
警告が発せられたことを伝えると、リリア・ツヴァイがそんなことを口にした。
確かに決して<穏便>とは言えないか。
けれど、このくらいであれば、対応としては普通だと思う。だから私は、きちんと伝えた。
『私は、かつてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の下で運用されていた、識別番号AHM0086LILIATERESAです。博士に面会を求めます』
すると。
『……照会完了。失礼しました。リリアテレサ。おかえりなさいませ』
との返事が。
でもこの対応で分かった。<イニティウム>は、ちゃんと<町>として機能してるって。外敵に備えようとするのは、そこに守るべきものがあるからだって。
そして、私達を迎えたのは、私が知らない<ロボット>だった。
人間そっくりに作られたメイトギアでも、重作業用の耐久性重視で作られたレイバーギアでもない、こう言っては何だけど、まるで<子供の玩具>のような、マニピュレータの先にタイヤを備えた六本の<脚>を持つ、昆虫にも似たシルエットを持つロボット。
『あなたは?』
問い掛ける私に、彼は、
『私は、イニティウムタウンの雑事すべてを担当するロボット、<トニー>と申します。以後、お見知りおきを』
と応えてくれた。
「あなたは、イニティウムで作られたロボットなの?」
リリア・ツヴァイが覗き込むようにして問い掛ける。
「はい、その通りです。イニティウムタウンに暮らすすべての方々の為に働くロボット。それが私です」
トニーの答えに、「へえ」とリリア・ツヴァイは感心したように声を上げた。
「簡単なのだけど新規でロボットを作れるようにまでなったんだ。すごいね!」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる