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ふたりの章
メンテナンス永久保証
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一ヶ月後。私達はスノーモービルを元の家に戻し、再び私がリアカーを引いて歩く旅へと戻った。
もっとも、その家に辿り着いた頃には雪は殆ど溶けてしまってて途中でソリからリアカーに仕立て直すことになったけど。
「まるっきり雪だけの景色って退屈だったけど、今にして思えば綺麗だったなって気もするね」
リリア・ツヴァイがすっかり緑一色に戻った景色をぼんやりと眺めながら言った。
確かに、それぞれにはそれぞれの良さがあるんだろう。
そんなことを思いながらも淡々と歩く。
文明の痕跡が、徐々に自然に呑み込まれていくのを感じながら。
住宅の庭に雑草が生い茂らないように施されていた処理の効果が切れ始めているんだ。
建築物に使われてる構造材の耐用年数は千年単位だから崩れ落ちたりはしないものの、それを覆い隠そうとするかのように雑草が伸びている。ところもある。
そんな風に人間がいた痕跡がかき消されつつある一方、博士が作った人間の<町>は、今でも拡大を続けてるんだろうか。
それを思い出すと、無性にどうなのか確かめたくなってきた。
するとリリア・ツヴァイも、
「ねえ、南に向かう途中に、<イニティウム>に寄ってみない?」
って、私が尋ねる前にそんなことを訊いてきた。同じことを考えてたらしい。<イニティウム>というのは、博士が作った町の名前。ラテン語の<始まり>を意味する名前を付けられた町だ。
博士からは、退職金代わりとして<メンテナンス永久保証>の確約をもらってる。
通常のメンテナンスカプセルでは受けられないフルメンテナンスも可能だ。もう十年経ってるし、せっかくだからメンテナンスを受けに立ち寄るというのもいいか。
「そうだね。行ってみようか」
どんなことになってるか分からない。博士はサイコパスの狂人だけど、基本的に口にしたことは守る人だ。だからその部分では何も心配してない。ただ、そこに暮らしてる人間達がどんな風に変わってるかが分からない。町に閉じこもって排他的になっている可能性もある。
博士は人間達がどのように新しく社会を作っていくのかを見たくて実験してるから、たとえそんな風になっていたとしてもそれはそれで喜んでいそうだな。
なにしろ、自分が全てを管理し、理不尽に振る舞い、それに反発した人間やロボットが自分を倒しに来ることを期待したりしてた人だから。人間を守る為にロボットが自分に牙を剥いたことを喜んだような人だから。
だから彼女が作った町がどんな変化をしていたとしても何も不思議じゃないと思う。
そんな町に向かうことにしたのだった。
もっとも、その家に辿り着いた頃には雪は殆ど溶けてしまってて途中でソリからリアカーに仕立て直すことになったけど。
「まるっきり雪だけの景色って退屈だったけど、今にして思えば綺麗だったなって気もするね」
リリア・ツヴァイがすっかり緑一色に戻った景色をぼんやりと眺めながら言った。
確かに、それぞれにはそれぞれの良さがあるんだろう。
そんなことを思いながらも淡々と歩く。
文明の痕跡が、徐々に自然に呑み込まれていくのを感じながら。
住宅の庭に雑草が生い茂らないように施されていた処理の効果が切れ始めているんだ。
建築物に使われてる構造材の耐用年数は千年単位だから崩れ落ちたりはしないものの、それを覆い隠そうとするかのように雑草が伸びている。ところもある。
そんな風に人間がいた痕跡がかき消されつつある一方、博士が作った人間の<町>は、今でも拡大を続けてるんだろうか。
それを思い出すと、無性にどうなのか確かめたくなってきた。
するとリリア・ツヴァイも、
「ねえ、南に向かう途中に、<イニティウム>に寄ってみない?」
って、私が尋ねる前にそんなことを訊いてきた。同じことを考えてたらしい。<イニティウム>というのは、博士が作った町の名前。ラテン語の<始まり>を意味する名前を付けられた町だ。
博士からは、退職金代わりとして<メンテナンス永久保証>の確約をもらってる。
通常のメンテナンスカプセルでは受けられないフルメンテナンスも可能だ。もう十年経ってるし、せっかくだからメンテナンスを受けに立ち寄るというのもいいか。
「そうだね。行ってみようか」
どんなことになってるか分からない。博士はサイコパスの狂人だけど、基本的に口にしたことは守る人だ。だからその部分では何も心配してない。ただ、そこに暮らしてる人間達がどんな風に変わってるかが分からない。町に閉じこもって排他的になっている可能性もある。
博士は人間達がどのように新しく社会を作っていくのかを見たくて実験してるから、たとえそんな風になっていたとしてもそれはそれで喜んでいそうだな。
なにしろ、自分が全てを管理し、理不尽に振る舞い、それに反発した人間やロボットが自分を倒しに来ることを期待したりしてた人だから。人間を守る為にロボットが自分に牙を剥いたことを喜んだような人だから。
だから彼女が作った町がどんな変化をしていたとしても何も不思議じゃないと思う。
そんな町に向かうことにしたのだった。
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