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ふたりの章

救難要請

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歩くのと変わらない速度でゆっくりと、私達はひたすら雪原の中を進む。

リリア・ツヴァイは変化に乏しい風景に飽きてしまって、ほとんど寝てる。バイタルサインは常にモニターしてるから心配はしてないけど、よく寝られるものだと思う。

と、その時、私のセンサーに捉えられた信号があった。個人の住宅の信号だ。前方三キロ。機能はしてるらしい。住宅を管理してるAIからの情報交換を求める通信だった。

情報が途絶えて久しく、現状が把握できずに対処できないでいたとのこと。

ネットワークも既に機能してないから、確かに通常通信の範囲外だと情報は遮断されたままだろう。

だから、私が知る限りの、惑星ハイシャインの情報について提示した。

その上で、リリア・ツヴァイに、二日ぶりにベッドでの睡眠を提供できると考えて、避難を要請した。

すると向こうからも、救援を要請する内容の通信が。住人が倒れたので救護が必要ということだった。

もっとも、その住人が倒れたのは既に五年前。もう救命の可能性はない。そもそも添付されたデータを見る限りではもう白骨化してるみたいだったし。

それでも、速度を上げて<救難>に向かう。

「何があったの?」

速度が上がったことに気付いたリリア・ツヴァイが目を覚まし、尋ねてくる。

「救難要請だ。この先の住宅で住人が倒れているらしい」

「ああ…」

私の説明だけで彼女も察して、時速三十キロまで速度を上げられた、リアカーを改造したソリに掴まって待つ。

完全にノンストップで走ったから五分強で信号が出ていた住宅へと着いた。わざわざ住宅街を離れて建てられたそれによくみられる、ログハウス風の住宅だった。

「ここ?」

「……」

分かってはいても確認するようにリリア・ツヴァイが訊いてくるのに、私も黙って頷いた。

鍵は既に開けられてて、住宅用AIが救助の為の立ち入りを許可してくる。

それに応じて私達もそっとドアを開けて中を覗き込んだ。すると、ドアを開けてすぐのリビングの中央に、白骨化した遺体があった。

「あ…」

リリア・ツヴァイがが小さく声を上げる。見てのとおり、救命どころじゃない状態だった。

「死亡を確認。埋葬の必要があると認めます」

口にすると同時に、住宅のAIに対して客観的事実として通信で伝える。

そして住宅用AIから返ってきた通信に従って、私はその住宅にあった毛布に白骨化した遺体を丁寧に移し替え、リリア・ツヴァイと一緒に住宅の庭に埋葬した。

でも、五年前に倒れて白骨化してたということは、この遺体の人物もCLSは感染していたとしても発症せず、そのまま微生物によって分解され、今の状態になったということを示していたのだった。

不顕性感染者の一人だったということだ。

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