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ふたりの章

両想い

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真っ白な雪原と、真っ青な空。それが地平線で綺麗に分かれてる。まるで絵画のような風景。

人間はこういうのを見た時、どんな気持ちになるんだろう。

私?

私は、そうだな、『美しい』って思うかな。

それが、元々<『人間はこういう時、美しいと感じることがある』という知識>を与えられてることがベースになってるかもしれなくても、今の私はこの光景を『美しい』と思う。

「あったかい…」

私と一緒に毛布にくるまり、リリア・ツヴァイがそう声を漏らした。昼食をとるのに休憩して、私のヒーターで彼女を温めてるんだ。

そうしないと人間の体は熱を失って機能不全を起こすこともある。

私達ロボットも、マイナス百度くらいになると防寒装備を着けるか、外部ヒーターを用いないと機能不全を起こすけど、人間の限界はそれよりもっとずっと低い。

以前はそれを、『不便だな』と思ったりもしてたのに、今ではむしろそれが『嬉しい』。

こうしてリリア・ツヴァイを抱いて彼女を温められてることが、そうする必要があるというのが『嬉しい』。

不思議だ。

するとリリア・ツヴァイが言う。

「私ね、リリアテレサにこうして抱いてもらうのがすっごく嬉しいんだよ。気持ちいいんだ。だから人間って寄り添い合ったりするんだね」

「そうかもしれない。私はロボットだけど、リリア・ツヴァイとならこうしてたいと思う」

「えへへ、じゃあ、両想いだね♡」

戯れに彼女が使った<両想い>という言葉に、私のメインフレームが僅かに熱を帯びた気がした。機体の温度分布に変化はない筈なのに。

惑星リヴィアターネの空の下で、大地の上で、私と彼女は二人、こうして寄り添い合ってる。寄り添い合いながら、当てのない旅を続けてる。

この私達の物語がどこで終わりを迎えるのかは分からない。正直、ここで終わったって別に構わない。彼女と二人でここで氷に閉ざされて彫像のようになってしまったっていい気がする。

だけど彼女は言った。

「おなかも膨れたし体もあったまったし、そろそろ行こうか」

「そうだね」

彼女が先に進むことを望むなら、私がそれを拒む理由はない。

二人を覆っていた毛布を解いて、スノーモービルの方へと移る。私がそうしてる間に彼女は食事の後片付けをして、それからまた毛布にくるまってリアカーの荷台に座り直す。

「じゃあ、行くよ」

「うん。お願い」

短くやり取りして、私はスノーモービルにアクセスした。

子供を模した私の体にこのスノーモービルは大きすぎて、人間がするみたいな操作は難しい。だから車体を制御しているAIにアクセスして直接操作するんだ。

『微速前進』

私がそう指示すると、スノーモービルは、ゆっくりとクローラーで雪を踏みしめながら、目の前に広がるまっさらな雪原へと進みだしたのだった。

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