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ふたりの章
雪景色
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完全に銀世界となってしまったことで、私とリリア・ツヴァイは今後の方針を検討することにした。
でも、その結論は。
「行けるところまで行こう」
というものだった。
現在、気温マイナス三度。私にとっては何の支障もない。人間の体を持つリリア・ツヴァイにとっては不具合があっても、対策すれば致命的じゃない。
だから、行けるところまで行く。
だけどその為には、準備が必要だった。
『緊急避難の為に協力を要請します』
ガレージ内に置かれていたスノーモービルのAIに支援を要請する。
すると、
『損傷なく返却されるように細心の注意を払うことを条件に了承する』
と返答をもらえた。そこで、ガレージ前をある程度除雪して、スノーモービルを外に出した。そしてさらに、スノーモービルにロープを繋いで、加工したリアカーに括り付ける。
「お~! ソリだ!」
声を上げたリリア・ツヴァイの言うとおりだった。私は古くて捨てられる予定だったのだろうスキー板を加工してリアカーに履かせ、ソリに改造したんだ。
ゆっくりとスノーモービルで牽引し、雪原となった外に出す。
最初はあくまで私が引くつもりだったんだけど、ここまでになってしまうとさすがに無理があるので、拝借したスノーモービルで牽引していくことにする。
「やふ~! すっご~い!」
無理をしないように、歩くよりはやや早い程度の速度で、道路に埋設されたマーカーを頼りに道沿いに移動を開始すると、防寒服を重ね着して着ぐるみの如くなりつつリアカーの荷台に乗ったリリア・ツヴァイが子供のようにはしゃいでた。
これまではあくまで歩いての移動を心掛けてきたけど、こうなるとやむを得ない。
それでも歩くのと大きく変わらない速度を維持することで、ゆっくりと景色を記録しながらさらに北を目指す。
私も、ここまでの雪景色の中に降り立つのは初めてだった。もっとも、以前のオーナーのところにいた頃については、初期化されてるから分からないけどね。あくまで、博士に買われてからは初めてという意味だ。
雪。水滴が結晶化した状態のままで地上へと落ちてきたもの。
人間はそれに、ただの厄介者というだけでなく、いろいろな意味を持たせるらしい。ムードを演出する為の小道具や、子供の遊び道具など。
「ね~、見て見て!」
さっそく、リアカーから身を乗り出して手ですくった雪を丸めて作ったものを、リリア・ツヴァイが私に見せてきた。
その声に振り替えると、彼女が両手に乗せて掲げた、小さな<雪だるま>の姿が目に映る。
人間なら脇見運転ということで危険なその行為も、機械の体を持つ私には、目視以外のナビゲーションが可能なので、何の問題もない。
「可愛いね」
私は笑顔を作って、そう応えてたのだった。
でも、その結論は。
「行けるところまで行こう」
というものだった。
現在、気温マイナス三度。私にとっては何の支障もない。人間の体を持つリリア・ツヴァイにとっては不具合があっても、対策すれば致命的じゃない。
だから、行けるところまで行く。
だけどその為には、準備が必要だった。
『緊急避難の為に協力を要請します』
ガレージ内に置かれていたスノーモービルのAIに支援を要請する。
すると、
『損傷なく返却されるように細心の注意を払うことを条件に了承する』
と返答をもらえた。そこで、ガレージ前をある程度除雪して、スノーモービルを外に出した。そしてさらに、スノーモービルにロープを繋いで、加工したリアカーに括り付ける。
「お~! ソリだ!」
声を上げたリリア・ツヴァイの言うとおりだった。私は古くて捨てられる予定だったのだろうスキー板を加工してリアカーに履かせ、ソリに改造したんだ。
ゆっくりとスノーモービルで牽引し、雪原となった外に出す。
最初はあくまで私が引くつもりだったんだけど、ここまでになってしまうとさすがに無理があるので、拝借したスノーモービルで牽引していくことにする。
「やふ~! すっご~い!」
無理をしないように、歩くよりはやや早い程度の速度で、道路に埋設されたマーカーを頼りに道沿いに移動を開始すると、防寒服を重ね着して着ぐるみの如くなりつつリアカーの荷台に乗ったリリア・ツヴァイが子供のようにはしゃいでた。
これまではあくまで歩いての移動を心掛けてきたけど、こうなるとやむを得ない。
それでも歩くのと大きく変わらない速度を維持することで、ゆっくりと景色を記録しながらさらに北を目指す。
私も、ここまでの雪景色の中に降り立つのは初めてだった。もっとも、以前のオーナーのところにいた頃については、初期化されてるから分からないけどね。あくまで、博士に買われてからは初めてという意味だ。
雪。水滴が結晶化した状態のままで地上へと落ちてきたもの。
人間はそれに、ただの厄介者というだけでなく、いろいろな意味を持たせるらしい。ムードを演出する為の小道具や、子供の遊び道具など。
「ね~、見て見て!」
さっそく、リアカーから身を乗り出して手ですくった雪を丸めて作ったものを、リリア・ツヴァイが私に見せてきた。
その声に振り替えると、彼女が両手に乗せて掲げた、小さな<雪だるま>の姿が目に映る。
人間なら脇見運転ということで危険なその行為も、機械の体を持つ私には、目視以外のナビゲーションが可能なので、何の問題もない。
「可愛いね」
私は笑顔を作って、そう応えてたのだった。
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