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ふたりの章
新種の生物
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私達はロボット同士だから、人間のように口と音声を使って会話する必要は本当はない。直接<通信>によってやり取りする方が大量の情報を一度にやり取りできる。回りくどくて不完全な<言葉>に頼る必要も本当はないんだ。全てを数値化してデータ化した情報だけで本来は事足りる。
だけど、私達は敢えて、人間のように口から言葉を発して<会話>した。それ自体がある意味では欺瞞に満ちた行為であると知りつつも。
「ここに投棄された私達は、明確な目的もなく指示もなく、ただ『途方に暮れた』状態でした。CLS患者の処置をするようにと言われても、そのCLS患者とも殆ど遭遇できなかったんです。
せめて初期化されていれば待機状態を維持もできたのですが、かつての記憶が残ったままで投棄されたのでは、それもままなりません。
しかも、エレナ達のように幼いCLS患者は、体が小さい分、体液の循環が足りているらしく、ご存知のように辛うじてながら生きた人間のようにも見えます。その為、私達はエレナ達を<処置すべき対象>と認識できなかったのです。
私のように考えるメイトギアは他にも数多くいて、私達は互いに連絡を取り合い、それぞれコミュニティを形成するようになりました。またそれを先導してくださったメイトギアもかつてはいたのです。
そのメイトギアも、機能停止してしまったのか、今では全く連絡も取れませんが……」
プリシラHUK577が語る内容に、私は思い当たる節があった。かつて、メイトギアを先導してコミュニティを作り、CLS患者に対する認識においてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士と決定的に対立したことで、博士に排除されたメイトギアがいたんだ。
そのメイトギアは、CLS患者そのものを<新種の生物>と考え、保護しようと考えたらしい。<動物愛護法>を根拠にした行動だったみたいだけど、法律とかより自分の研究を優先する博士とはまったく相容れなかった。
衛星軌道上で今もこの惑星リヴィアターネを見守っている博士の宇宙船で待機してたメイトギアをハッキングしてまで対抗しようとしたものの、それらの行動全ては博士に見透かされてて最後は破壊されたそうだ。
メイトギアは、ううん、メイトギアを含むすべてのロボット、それどころかただの家電製品に搭載されているAIでさえ人間を傷付けてはいけないと考えてる。人間に歯向かうことはできない。その時、博士はもう既に人間じゃなかったから反抗もできたけど、でもここ惑星リヴィアターネの生き残りの<人間>を博士が押さえてたから、もう結末は決まってたということなんだ。
だけど、私達は敢えて、人間のように口から言葉を発して<会話>した。それ自体がある意味では欺瞞に満ちた行為であると知りつつも。
「ここに投棄された私達は、明確な目的もなく指示もなく、ただ『途方に暮れた』状態でした。CLS患者の処置をするようにと言われても、そのCLS患者とも殆ど遭遇できなかったんです。
せめて初期化されていれば待機状態を維持もできたのですが、かつての記憶が残ったままで投棄されたのでは、それもままなりません。
しかも、エレナ達のように幼いCLS患者は、体が小さい分、体液の循環が足りているらしく、ご存知のように辛うじてながら生きた人間のようにも見えます。その為、私達はエレナ達を<処置すべき対象>と認識できなかったのです。
私のように考えるメイトギアは他にも数多くいて、私達は互いに連絡を取り合い、それぞれコミュニティを形成するようになりました。またそれを先導してくださったメイトギアもかつてはいたのです。
そのメイトギアも、機能停止してしまったのか、今では全く連絡も取れませんが……」
プリシラHUK577が語る内容に、私は思い当たる節があった。かつて、メイトギアを先導してコミュニティを作り、CLS患者に対する認識においてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士と決定的に対立したことで、博士に排除されたメイトギアがいたんだ。
そのメイトギアは、CLS患者そのものを<新種の生物>と考え、保護しようと考えたらしい。<動物愛護法>を根拠にした行動だったみたいだけど、法律とかより自分の研究を優先する博士とはまったく相容れなかった。
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