77 / 115
ふたりの章
新種の生物
しおりを挟む
私達はロボット同士だから、人間のように口と音声を使って会話する必要は本当はない。直接<通信>によってやり取りする方が大量の情報を一度にやり取りできる。回りくどくて不完全な<言葉>に頼る必要も本当はないんだ。全てを数値化してデータ化した情報だけで本来は事足りる。
だけど、私達は敢えて、人間のように口から言葉を発して<会話>した。それ自体がある意味では欺瞞に満ちた行為であると知りつつも。
「ここに投棄された私達は、明確な目的もなく指示もなく、ただ『途方に暮れた』状態でした。CLS患者の処置をするようにと言われても、そのCLS患者とも殆ど遭遇できなかったんです。
せめて初期化されていれば待機状態を維持もできたのですが、かつての記憶が残ったままで投棄されたのでは、それもままなりません。
しかも、エレナ達のように幼いCLS患者は、体が小さい分、体液の循環が足りているらしく、ご存知のように辛うじてながら生きた人間のようにも見えます。その為、私達はエレナ達を<処置すべき対象>と認識できなかったのです。
私のように考えるメイトギアは他にも数多くいて、私達は互いに連絡を取り合い、それぞれコミュニティを形成するようになりました。またそれを先導してくださったメイトギアもかつてはいたのです。
そのメイトギアも、機能停止してしまったのか、今では全く連絡も取れませんが……」
プリシラHUK577が語る内容に、私は思い当たる節があった。かつて、メイトギアを先導してコミュニティを作り、CLS患者に対する認識においてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士と決定的に対立したことで、博士に排除されたメイトギアがいたんだ。
そのメイトギアは、CLS患者そのものを<新種の生物>と考え、保護しようと考えたらしい。<動物愛護法>を根拠にした行動だったみたいだけど、法律とかより自分の研究を優先する博士とはまったく相容れなかった。
衛星軌道上で今もこの惑星リヴィアターネを見守っている博士の宇宙船で待機してたメイトギアをハッキングしてまで対抗しようとしたものの、それらの行動全ては博士に見透かされてて最後は破壊されたそうだ。
メイトギアは、ううん、メイトギアを含むすべてのロボット、それどころかただの家電製品に搭載されているAIでさえ人間を傷付けてはいけないと考えてる。人間に歯向かうことはできない。その時、博士はもう既に人間じゃなかったから反抗もできたけど、でもここ惑星リヴィアターネの生き残りの<人間>を博士が押さえてたから、もう結末は決まってたということなんだ。
だけど、私達は敢えて、人間のように口から言葉を発して<会話>した。それ自体がある意味では欺瞞に満ちた行為であると知りつつも。
「ここに投棄された私達は、明確な目的もなく指示もなく、ただ『途方に暮れた』状態でした。CLS患者の処置をするようにと言われても、そのCLS患者とも殆ど遭遇できなかったんです。
せめて初期化されていれば待機状態を維持もできたのですが、かつての記憶が残ったままで投棄されたのでは、それもままなりません。
しかも、エレナ達のように幼いCLS患者は、体が小さい分、体液の循環が足りているらしく、ご存知のように辛うじてながら生きた人間のようにも見えます。その為、私達はエレナ達を<処置すべき対象>と認識できなかったのです。
私のように考えるメイトギアは他にも数多くいて、私達は互いに連絡を取り合い、それぞれコミュニティを形成するようになりました。またそれを先導してくださったメイトギアもかつてはいたのです。
そのメイトギアも、機能停止してしまったのか、今では全く連絡も取れませんが……」
プリシラHUK577が語る内容に、私は思い当たる節があった。かつて、メイトギアを先導してコミュニティを作り、CLS患者に対する認識においてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士と決定的に対立したことで、博士に排除されたメイトギアがいたんだ。
そのメイトギアは、CLS患者そのものを<新種の生物>と考え、保護しようと考えたらしい。<動物愛護法>を根拠にした行動だったみたいだけど、法律とかより自分の研究を優先する博士とはまったく相容れなかった。
衛星軌道上で今もこの惑星リヴィアターネを見守っている博士の宇宙船で待機してたメイトギアをハッキングしてまで対抗しようとしたものの、それらの行動全ては博士に見透かされてて最後は破壊されたそうだ。
メイトギアは、ううん、メイトギアを含むすべてのロボット、それどころかただの家電製品に搭載されているAIでさえ人間を傷付けてはいけないと考えてる。人間に歯向かうことはできない。その時、博士はもう既に人間じゃなかったから反抗もできたけど、でもここ惑星リヴィアターネの生き残りの<人間>を博士が押さえてたから、もう結末は決まってたということなんだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる