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ふたりの章
価値観
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ロボットも、主人の影響を受けてある程度は価値観(厳密には人間が持つそれとは違うけど)とかそういったものが変化することはある。だから意見が対立することも無い訳じゃない。
実際、私が博士のところにいた頃にも、メイトギア同士の意見の対立によって、ある種の<戦争>のようなことが起こったことがあった。
徹底して『人間だけ』を守ろうとするメイトギアと、『人間に準ずる存在』も守ろうとするメイトギアとに分かれて対立したんだ。
『人間だけ』というのは、文字通り、人間社会における法律上も<人間>と見做される存在のことだ。
対して、『人間に準ずる存在』というのは、プリシラHUK577らが保護してる、『外見上は人間と見ることもできるCLS患者』や、『法律上は人間としては認められないクローン』、そして、リリア・ツヴァイのような、『CLS患者の体をベースに造られたロボット』も含まれる。
それも結局、『どこまでを人間と見做すか』って話でしかないけどね。
人間を守るのがロボットの役目だから。だけどどこまでを人間と見做すかという点で折り合わずに対立してしまったんだ。
あの時は結局、クローンや、リリア・ツヴァイのようなCLS患者の体を使ったロボット、そして何より、<本当の人間>を擁してた博士が一人勝ちという形で幕を閉じたけど。
そう、この惑星リヴィアターネにも、<本当の人間>はまだ存在してる。私が知る限りではたった二人だけだったとはいえ。
どんな病気でも、限りなく発症率が百パーセントに近いものでも、それを発症しない個体というのは存在する。それは例え、CLSであっても同じ。
そしてCLSの場合は、百万人に一人くらいの割合だとみられてた。当時、人口が一億二千万人ほどだったここ惑星リヴィアターネでは、理論上は百二十人ほどが存在する可能性があった。
まあそれでも、あの時点で実際に確認されていた事例は三人だけ。しかもそのうちの一人は既に亡くなっていた。残った二人ともをメルシュ博士が押さえたことで、二人だけを守ろうとしてたメイトギアの勢力は、博士のメイトギアと、博士に賛同したメイトギアによって殲滅された。
まあ、当然の結果だけどね。守るべき<人間>が博士の側についてしまった以上、歯向かうなんてことは事実上無理だから。
だけど、私自身、その博士と袂を分かつことになった。何しろ、当の主人たる博士自身が人間じゃなくなってしまってたんだから。
それでも私は、博士と敵対はしなかった。博士は人間としては最低だったけど、手段の為なら目的すら変える人だったし、自分が手に入れた<本物の人間を使っての実験という手段を大事>にするから、そういう意味では、その人間を大事にするのが分かってたからね。
実際、私が博士のところにいた頃にも、メイトギア同士の意見の対立によって、ある種の<戦争>のようなことが起こったことがあった。
徹底して『人間だけ』を守ろうとするメイトギアと、『人間に準ずる存在』も守ろうとするメイトギアとに分かれて対立したんだ。
『人間だけ』というのは、文字通り、人間社会における法律上も<人間>と見做される存在のことだ。
対して、『人間に準ずる存在』というのは、プリシラHUK577らが保護してる、『外見上は人間と見ることもできるCLS患者』や、『法律上は人間としては認められないクローン』、そして、リリア・ツヴァイのような、『CLS患者の体をベースに造られたロボット』も含まれる。
それも結局、『どこまでを人間と見做すか』って話でしかないけどね。
人間を守るのがロボットの役目だから。だけどどこまでを人間と見做すかという点で折り合わずに対立してしまったんだ。
あの時は結局、クローンや、リリア・ツヴァイのようなCLS患者の体を使ったロボット、そして何より、<本当の人間>を擁してた博士が一人勝ちという形で幕を閉じたけど。
そう、この惑星リヴィアターネにも、<本当の人間>はまだ存在してる。私が知る限りではたった二人だけだったとはいえ。
どんな病気でも、限りなく発症率が百パーセントに近いものでも、それを発症しない個体というのは存在する。それは例え、CLSであっても同じ。
そしてCLSの場合は、百万人に一人くらいの割合だとみられてた。当時、人口が一億二千万人ほどだったここ惑星リヴィアターネでは、理論上は百二十人ほどが存在する可能性があった。
まあそれでも、あの時点で実際に確認されていた事例は三人だけ。しかもそのうちの一人は既に亡くなっていた。残った二人ともをメルシュ博士が押さえたことで、二人だけを守ろうとしてたメイトギアの勢力は、博士のメイトギアと、博士に賛同したメイトギアによって殲滅された。
まあ、当然の結果だけどね。守るべき<人間>が博士の側についてしまった以上、歯向かうなんてことは事実上無理だから。
だけど、私自身、その博士と袂を分かつことになった。何しろ、当の主人たる博士自身が人間じゃなくなってしまってたんだから。
それでも私は、博士と敵対はしなかった。博士は人間としては最低だったけど、手段の為なら目的すら変える人だったし、自分が手に入れた<本物の人間を使っての実験という手段を大事>にするから、そういう意味では、その人間を大事にするのが分かってたからね。
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