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リリア・ツヴァイの章

些細な出来事

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近くに、海水客向けのシャワーなども備えたレストランがあるところで、その設備がまだ使えるのを確認した上で、私は海に入った。当然、また何も身に付けてないすっぽんぽんだ。どうせ誰かに見られる心配もないからね。見られたとしてもそれはたぶんロボットだし。

さすがに、以前に入った湖よりは波も大きくて、匂いも違うし、<海>って感じだった。もちろん、湖でのアシカみたいに海洋生物のCLS患畜が現れる可能性はあるわけで、それも警戒しつつ水に入る。

ザーン、ザーンと打ち寄せる水は綺麗で透き通っていて、その様子だけ見ていれば本当にいいところだ。クラゲがいるのが玉に瑕だけど。

しかし、クラゲって海を持つ惑星には何故かだいたいいるみたいなんだよね。生物の進化の過程で辿りやすい形態なのかな。

あまり深いところにはいかない。CLS患畜が潜んでたら困るし。

「フロートだ。使うか?」

レストランの売店に置かれてたフロートを手にしてたリリアテレサがそれを膨らましてくれて、投げてよこしてくれた。でっかいエイを模したフロートだった。

私はそれに掴まり、と言うか完全にその上に乗ってゆらゆらと水面を漂ったまま空を見上げる。

どこまでも突き抜けるように空も澄んでて、夏はもう終わりに近付いてる筈なのに日差しは強い。

「日焼け止めも塗ってやろう」

「そうだね」

ちょっとだけのつもりだったけどもう少しゆっくり遊んでいきたくなって、そうなるとさすがに日焼けも心配しないといけないから、やっぱりレストランの売店から持ってきてた日焼け止めを、リリアテレサが塗ってくれた。すっぽんぽんだから全身にまんべんなく。

しっとりとしつつサラッとしてる彼女の手の感触が気持ちいい。当然か。人間がそう感じるように作られてるんだもんね。

日焼け止めを塗ってもらってからまた、海に入った。

本当にのんびりしてる。あんな、人類史上未曽有の惨禍があったなんてまったく思えないくらいに。

…ああでも、この惑星リヴィアターネそのものにとっては、地表でうろちょろしてるだけの生物の成り行きなんてどうでもいいことなのかな。どんな生物が増えようが、絶滅しようが、惑星から見たら些末なことなんだろうしさ。

それに、ネズミ以下の大きさの脳しかもたない生き物や、そもそも脳を持たないタイプの生き物にとってはCLSは基本的に無害なウイルスだ。それなりの大きさ以上の生物がいなくなったらいなくなったでそれに応じた生物の繁殖が行われるだけだな。

人間にとってあれは<惨劇>でも、生物全体から見たらやっぱり些細な出来事だったのかもね。

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