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リリア・ツヴァイの章
突然の別れ
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湖の水は綺麗だったと思うけど、念の為、リゾート客用にシャワーも備えたレストランに寄ってシャワーを借りて、服を着た。つまり、それまでずっとすっぽんぽんだった訳だ。
もっとも、誰も見てないから公序良俗にも反しないし、セフセフ。
それからリリアテレサと一緒にレストランの厨房に入って食料を探す。冷蔵庫の中のものはさすがにダメになってたけど、常温で長期保存ができるようにパックされた食品の方はまだ十分に食べられた。それを使ってレストランの厨房でリリアテレサが食事を作ってくれた。
モーリスには、パックから取り出した食材をそのままあげた。トウモロコシとか豆とか、結構な量が残されてた。
「美味しかった…」
私か食事をしてる間に、リリアテレサは食べられる食材をリアカーに積み込んでた。それからレストランに設置されてたメンテナンスルームでメンテナンスと急速充電を行う。
モーリスがもりもりと食べてたから私よりも時間がかかってた。結構なお年寄りにも見えるのにすごい食欲だ。この調子だとまだまだ生きそうだな。
なんてことも思う。
だからモーリスの分の食料も必要なんだよね。まあ、道端であの虫を食べてたらそれでいいかもだけどさ。
それに最後にはモーリス自身が私の食料になるかもね。ペット用に品種改良されてると言っても豚は豚。産業動物だもん。
って、まさか私かそんなことを考えてたからって訳じゃないと思うけど、レストランでそのまま夜を明かしたら、翌日の朝、モーリスは起きてこなかった。
「え?」
と思った私にリリアテレサが応える。
「昨夜遅く、心臓が停止した。突然ではあったが寿命だったと思われる。
どうする? 食べるか? 食べるなら調理するが」
そう訊かれたけど、私は黙って首を横に振った。なんだかとてもそんな気にはなれなかった。
モーリスはペットとして飼われてた。食肉用の産業動物じゃない。ロボットは本来、そういうことはきっちり割り切れるけど、私には無理だったようだ。
リリアテレサに運んでもらって、湖アシカを埋めたところから少し離してモーリスも埋めた。こっちは近くの柵を壊して挿して墓標にした。
それからリアカーを引いて出発する。
だけど……
なんだかいつの間にかモーリスがいるのも当たり前になってたからか、ひどく物足りない気がした。
私が歩きながらポロポロと涙を流しても、リリアテレサは見て見ぬふりをしてくれた。
命が消えるってこういうことなんだね……
分かってたはずのことを改めて教えられた気がして、私は胸が締め付けられるような気持ちで歩き続けたのだった。
もっとも、誰も見てないから公序良俗にも反しないし、セフセフ。
それからリリアテレサと一緒にレストランの厨房に入って食料を探す。冷蔵庫の中のものはさすがにダメになってたけど、常温で長期保存ができるようにパックされた食品の方はまだ十分に食べられた。それを使ってレストランの厨房でリリアテレサが食事を作ってくれた。
モーリスには、パックから取り出した食材をそのままあげた。トウモロコシとか豆とか、結構な量が残されてた。
「美味しかった…」
私か食事をしてる間に、リリアテレサは食べられる食材をリアカーに積み込んでた。それからレストランに設置されてたメンテナンスルームでメンテナンスと急速充電を行う。
モーリスがもりもりと食べてたから私よりも時間がかかってた。結構なお年寄りにも見えるのにすごい食欲だ。この調子だとまだまだ生きそうだな。
なんてことも思う。
だからモーリスの分の食料も必要なんだよね。まあ、道端であの虫を食べてたらそれでいいかもだけどさ。
それに最後にはモーリス自身が私の食料になるかもね。ペット用に品種改良されてると言っても豚は豚。産業動物だもん。
って、まさか私かそんなことを考えてたからって訳じゃないと思うけど、レストランでそのまま夜を明かしたら、翌日の朝、モーリスは起きてこなかった。
「え?」
と思った私にリリアテレサが応える。
「昨夜遅く、心臓が停止した。突然ではあったが寿命だったと思われる。
どうする? 食べるか? 食べるなら調理するが」
そう訊かれたけど、私は黙って首を横に振った。なんだかとてもそんな気にはなれなかった。
モーリスはペットとして飼われてた。食肉用の産業動物じゃない。ロボットは本来、そういうことはきっちり割り切れるけど、私には無理だったようだ。
リリアテレサに運んでもらって、湖アシカを埋めたところから少し離してモーリスも埋めた。こっちは近くの柵を壊して挿して墓標にした。
それからリアカーを引いて出発する。
だけど……
なんだかいつの間にかモーリスがいるのも当たり前になってたからか、ひどく物足りない気がした。
私が歩きながらポロポロと涙を流しても、リリアテレサは見て見ぬふりをしてくれた。
命が消えるってこういうことなんだね……
分かってたはずのことを改めて教えられた気がして、私は胸が締め付けられるような気持ちで歩き続けたのだった。
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