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リリア・ツヴァイの章
単機能で安価な
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豚のモーリスが旅の仲間に加わることになって、いや、この豚が本当に<モーリス>なのかどうかはよく分からないけど、取り敢えず私達はモーリスと呼称することにして、一緒に歩いた。
こうなるとモーリスのことも守らなくちゃいけなくなる。とは言え、まあまあ強力な武器も得たから、今後はCLSバッファローのようなのが現れたって慌てる必要がないかなとは思う。
すると、まばらに民家があるところに来た。木立ちの中に隠れるようにして建ってるけど、無線給電機からの電気が届くからリリアテレサには住宅があることがすぐに分かってしまった。
空模様が怪しく、すぐにでも雨が降り出しそうだったこともあって、私達はそちらの集落に寄ることにした。そこで雨をやり過ごす為だ。
そこは、林を切り開いて造られた小さな集落みたいだった。
道路から一番近いところにあった住宅は、大きなガレージも備えたまずまず立派な感じの建物だ。ちょうどガレージも空いてたからそこにリアカーをとめて、住宅の様子を窺おうとした時、とうとう雨が降り出した。
住宅の中にも外にも大きな動物が動く気配はなく、鍵もかかっていなかったから私達はそこに入らせてもらった。ここも住宅管理用のAIはスイッチが切られてた。AIに管理されるような気がしてそれを嫌う人間は結構多いらしいからね。それに、AIは機能してなくても、住宅設備そのものには直接は影響ないし。
それはそれとして、その家は、玄関のところに小さな段差があって、靴がいくつか並べられてるものだった。この辺りでは珍しい、靴を脱いで上がるタイプの住宅だ。
私達は靴を脱ぐだけでいいけど、モーリスはそういう訳にはいかないから、リリアテレサが足を拭いてあげて家に上がらせた。足を拭かれる時もモーリスは大人しくしてた。体を触られることにも慣れてるんだな。人間との関係性がすごくいい豚だったんだと改めて感じた。
家の中は、思った以上に綺麗だった。鍵がかかっていなかったから家に人がいる時にアウトブレイクが起こったんだろうと思うけど、その痕跡もない。
と思ってたら、リリアテレサが言った。
「お掃除ロボットが動いてる…」
彼女の言う通りだった。微かに物音がし始めたと思ったら、家の奥からやや丸みを帯びた一辺三十センチくらいの角型の平べったい簡易型のロボットが出てきた。家事全般をこなすメイトギアが普及した今でも、さすがに高価なメイトギアを購入することは躊躇う人もある程度はいて、そういう人達が掃除をやってもらう為に買う、以前のモーテルで見た、一応は人間に近い形をしたお掃除ロボットより更に単機能で安価なロボットだった。
今ではそのお掃除ロボットがこの家の主人てことになるのかな。
もっとも、その<主人>は、私達のことを、警戒もしない代わりに歓迎もしてくれないけどね。
こうなるとモーリスのことも守らなくちゃいけなくなる。とは言え、まあまあ強力な武器も得たから、今後はCLSバッファローのようなのが現れたって慌てる必要がないかなとは思う。
すると、まばらに民家があるところに来た。木立ちの中に隠れるようにして建ってるけど、無線給電機からの電気が届くからリリアテレサには住宅があることがすぐに分かってしまった。
空模様が怪しく、すぐにでも雨が降り出しそうだったこともあって、私達はそちらの集落に寄ることにした。そこで雨をやり過ごす為だ。
そこは、林を切り開いて造られた小さな集落みたいだった。
道路から一番近いところにあった住宅は、大きなガレージも備えたまずまず立派な感じの建物だ。ちょうどガレージも空いてたからそこにリアカーをとめて、住宅の様子を窺おうとした時、とうとう雨が降り出した。
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それはそれとして、その家は、玄関のところに小さな段差があって、靴がいくつか並べられてるものだった。この辺りでは珍しい、靴を脱いで上がるタイプの住宅だ。
私達は靴を脱ぐだけでいいけど、モーリスはそういう訳にはいかないから、リリアテレサが足を拭いてあげて家に上がらせた。足を拭かれる時もモーリスは大人しくしてた。体を触られることにも慣れてるんだな。人間との関係性がすごくいい豚だったんだと改めて感じた。
家の中は、思った以上に綺麗だった。鍵がかかっていなかったから家に人がいる時にアウトブレイクが起こったんだろうと思うけど、その痕跡もない。
と思ってたら、リリアテレサが言った。
「お掃除ロボットが動いてる…」
彼女の言う通りだった。微かに物音がし始めたと思ったら、家の奥からやや丸みを帯びた一辺三十センチくらいの角型の平べったい簡易型のロボットが出てきた。家事全般をこなすメイトギアが普及した今でも、さすがに高価なメイトギアを購入することは躊躇う人もある程度はいて、そういう人達が掃除をやってもらう為に買う、以前のモーテルで見た、一応は人間に近い形をしたお掃除ロボットより更に単機能で安価なロボットだった。
今ではそのお掃除ロボットがこの家の主人てことになるのかな。
もっとも、その<主人>は、私達のことを、警戒もしない代わりに歓迎もしてくれないけどね。
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