上 下
51 / 115
リリア・ツヴァイの章

思わぬ出会い

しおりを挟む
私達が遭遇した豚は、アウトブレイクが起こった頃に生まれたものだと推測できた。正直、年齢を感じるし。

品種改良が進んだ豚は、寿命が二十五年ほどになってる種類もあるらしい。その多くが、肉などに加工する為の<産業動物>としての品種の豚じゃなくて、ペットとして飼われることの多い品種の豚なんだって。

今、私達の前を歩いてるのも、豚にしては小型で、いわゆる<ミニブタ>って呼ばれるタイプの豚だと思う。

ペットとして飼われる豚は知能が発達して犬とそれほど変わらないのもいるとか。だからこの豚も割と頭がいいのかもしれない。

ということはやっぱり、私達をどこかに案内したいんだろうな。

そう考えて大人しくついて行く。

すると、十分くらい歩いたところで道を外れて木立ちの中に入って行った。それでも、私達が道を外れてまでついて行くべきかと逡巡してるとみると立ち止まって様子を窺うようにこっちを見る。

だから私達は、リアカーを道路脇に残して豚について行くことにした。するとそこには、木立ちに隠れた小さな一軒の家があった。一応、その家に通じる道は作られてて幹線道路にも繋がってるみたいだけど、豚はその道じゃなくて最短ルートを辿ったみたいだね。

その家は、プレハブタイプの簡易なものに補強を加えてそれなりに長く使えるようにしたという感じの家だった。リリアテレサが、無線給電を通じて充電を始めたので、アミダ・リアクターも備えられてるのが分かった。

完全にちゃんとした住居として建てられた家だ。プレハブには本来、アミダ・リアクターまでは設置されないからね。専用の設備がないと設置できないものだから、仮で使うだけのプレハブにはもったいなくて普通は設置しないんだ。アミダ・リアクターを装備した電源車を置いて電気を使えるようにする場合もあるけど。

その家に、豚は躊躇うことなく入って行った。なるほど、ここが家なんだね。

そう思いながら私とリリアテレサも玄関をくぐると……

「…あ…!」

私は思わず声を上げてしまった。だってそこにあったのは、紛れもなく<人間の遺体>だったから。

小さな家の中に置かれたベッドに横になった状態で、しかもミイラ化して……

たぶん、アミダ・リアクターのおかげで電気が失われなくてエアコンがしっかり効いた部屋で乾燥していったんだろう。

着ている服からすると、年配の女性のようだった。

「死後、十年は経ってるかもしれない……でも…」

リリアテレサが皮膚の状態などからそう推測した。それと同時に、ベッドの脇のチェストの上に置かれたノートに書かれた日付は、十三年前のものだった。つまりこの遺体の人物は、CLSに感染せず七年ほど生きて、そして亡くなったってことになるのか。

そしてここに私達を導いた豚は、ミイラ化した女性のベッドの脇に座り込んで寛ぎ始めていたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ

城山リツ
ファンタジー
 九百年あまり前、宮中に帝を悩ませる怪物が現れた。頭は猿、胴体は猪、尾は蛇、手足は虎である鵺という怪物はある武将とその郎党によって討ち取られた。だが鵺を倒したことによって武将達はその身に呪いを受けてしまい、翌年命を落とす。  それでも呪いは終わらない。鵺は彼らを何度も人間に転生させ殺し続ける。その回数は三十三回。  そして三十四回目の転生者、唯蕾生(ただらいお)と周防永(すおうはるか)は現在男子高校生。蕾生は人よりも怪力なのが悩みの種。幼馴染でオカルトマニアの永に誘われて、とある研究所に見学に行った。そこで二人は不思議な少女と出会う。彼女はリン。九百年前に共に鵺を倒した仲間だった。だがリンは二人を拒絶して──  彼らは今度こそ鵺の呪いに打ち勝とうと足掻き始める。 ◎感想などいただけたら嬉しいです! ※本作品は「ノベルアップ+」「ラノベストリート」などにも投稿しています。 ※※表紙は友人の百和様に描いていただきました。転載転用等はしないでください。 【2024年11月2日追記】 作品全体の体裁を整えるとともに、一部加筆修正を行いました。 セクションごとの内容は以前とほぼ変わっていません。 ☆まあまあ加筆したセクションは以下の通りです☆ 第一章第17話 鵺の一番濃い呪い(旧第一章1-17 一番濃い呪い) 第四章第16話 侵入計画(旧第四章4-16 侵入計画)

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex
SF
強欲カルロス三田&オメガの野望を挫くために立ち上がったフェイスルックだったが、行く手に立ち塞がる山本と鈴木の魔手。手に汗握る熱血 DADAコラージュ小説。

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

幼馴染を守る為に死んだ黒騎士は、あの約束を守る為に、転生する

竹桜
ファンタジー
幼馴染を守る為に死んでしまったエドリックは、記憶が無くしたまま、別の世界に転生した。  だが、別の世界に住んでいた記憶が無いエドリックは、クラスメイト共に元々居た世界に勇者召喚されてしまう。  そこで記憶を取り戻し、幼馴染との約束を守る為にエドリックは、幼馴染と約束した場所に向かうのだった。 *タイトルを変更しました。 旧タイトル、生まれ変わっても君との約束を守るよ 新タイトル、幼馴染を守る為に死んだ黒騎士は、あの約束を守る為に、転生する  

処理中です...