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リリア・ツヴァイの章
思わぬ出会い
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私達が遭遇した豚は、アウトブレイクが起こった頃に生まれたものだと推測できた。正直、年齢を感じるし。
品種改良が進んだ豚は、寿命が二十五年ほどになってる種類もあるらしい。その多くが、肉などに加工する為の<産業動物>としての品種の豚じゃなくて、ペットとして飼われることの多い品種の豚なんだって。
今、私達の前を歩いてるのも、豚にしては小型で、いわゆる<ミニブタ>って呼ばれるタイプの豚だと思う。
ペットとして飼われる豚は知能が発達して犬とそれほど変わらないのもいるとか。だからこの豚も割と頭がいいのかもしれない。
ということはやっぱり、私達をどこかに案内したいんだろうな。
そう考えて大人しくついて行く。
すると、十分くらい歩いたところで道を外れて木立ちの中に入って行った。それでも、私達が道を外れてまでついて行くべきかと逡巡してるとみると立ち止まって様子を窺うようにこっちを見る。
だから私達は、リアカーを道路脇に残して豚について行くことにした。するとそこには、木立ちに隠れた小さな一軒の家があった。一応、その家に通じる道は作られてて幹線道路にも繋がってるみたいだけど、豚はその道じゃなくて最短ルートを辿ったみたいだね。
その家は、プレハブタイプの簡易なものに補強を加えてそれなりに長く使えるようにしたという感じの家だった。リリアテレサが、無線給電を通じて充電を始めたので、アミダ・リアクターも備えられてるのが分かった。
完全にちゃんとした住居として建てられた家だ。プレハブには本来、アミダ・リアクターまでは設置されないからね。専用の設備がないと設置できないものだから、仮で使うだけのプレハブにはもったいなくて普通は設置しないんだ。アミダ・リアクターを装備した電源車を置いて電気を使えるようにする場合もあるけど。
その家に、豚は躊躇うことなく入って行った。なるほど、ここが家なんだね。
そう思いながら私とリリアテレサも玄関をくぐると……
「…あ…!」
私は思わず声を上げてしまった。だってそこにあったのは、紛れもなく<人間の遺体>だったから。
小さな家の中に置かれたベッドに横になった状態で、しかもミイラ化して……
たぶん、アミダ・リアクターのおかげで電気が失われなくてエアコンがしっかり効いた部屋で乾燥していったんだろう。
着ている服からすると、年配の女性のようだった。
「死後、十年は経ってるかもしれない……でも…」
リリアテレサが皮膚の状態などからそう推測した。それと同時に、ベッドの脇のチェストの上に置かれたノートに書かれた日付は、十三年前のものだった。つまりこの遺体の人物は、CLSに感染せず七年ほど生きて、そして亡くなったってことになるのか。
そしてここに私達を導いた豚は、ミイラ化した女性のベッドの脇に座り込んで寛ぎ始めていたのだった。
品種改良が進んだ豚は、寿命が二十五年ほどになってる種類もあるらしい。その多くが、肉などに加工する為の<産業動物>としての品種の豚じゃなくて、ペットとして飼われることの多い品種の豚なんだって。
今、私達の前を歩いてるのも、豚にしては小型で、いわゆる<ミニブタ>って呼ばれるタイプの豚だと思う。
ペットとして飼われる豚は知能が発達して犬とそれほど変わらないのもいるとか。だからこの豚も割と頭がいいのかもしれない。
ということはやっぱり、私達をどこかに案内したいんだろうな。
そう考えて大人しくついて行く。
すると、十分くらい歩いたところで道を外れて木立ちの中に入って行った。それでも、私達が道を外れてまでついて行くべきかと逡巡してるとみると立ち止まって様子を窺うようにこっちを見る。
だから私達は、リアカーを道路脇に残して豚について行くことにした。するとそこには、木立ちに隠れた小さな一軒の家があった。一応、その家に通じる道は作られてて幹線道路にも繋がってるみたいだけど、豚はその道じゃなくて最短ルートを辿ったみたいだね。
その家は、プレハブタイプの簡易なものに補強を加えてそれなりに長く使えるようにしたという感じの家だった。リリアテレサが、無線給電を通じて充電を始めたので、アミダ・リアクターも備えられてるのが分かった。
完全にちゃんとした住居として建てられた家だ。プレハブには本来、アミダ・リアクターまでは設置されないからね。専用の設備がないと設置できないものだから、仮で使うだけのプレハブにはもったいなくて普通は設置しないんだ。アミダ・リアクターを装備した電源車を置いて電気を使えるようにする場合もあるけど。
その家に、豚は躊躇うことなく入って行った。なるほど、ここが家なんだね。
そう思いながら私とリリアテレサも玄関をくぐると……
「…あ…!」
私は思わず声を上げてしまった。だってそこにあったのは、紛れもなく<人間の遺体>だったから。
小さな家の中に置かれたベッドに横になった状態で、しかもミイラ化して……
たぶん、アミダ・リアクターのおかげで電気が失われなくてエアコンがしっかり効いた部屋で乾燥していったんだろう。
着ている服からすると、年配の女性のようだった。
「死後、十年は経ってるかもしれない……でも…」
リリアテレサが皮膚の状態などからそう推測した。それと同時に、ベッドの脇のチェストの上に置かれたノートに書かれた日付は、十三年前のものだった。つまりこの遺体の人物は、CLSに感染せず七年ほど生きて、そして亡くなったってことになるのか。
そしてここに私達を導いた豚は、ミイラ化した女性のベッドの脇に座り込んで寛ぎ始めていたのだった。
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