ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ

京衛武百十

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リリア・ツヴァイの章

そこにいたもの

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視界が開けた荒れ地を、私とリリアテレサはとぼとぼと歩いてた。聞こえてくるのはただ風の音ばかりだ。

ロボットであるリリアテレサは変わり映えしないこの光景を何とも思わないけど、不思議と私は飽き飽きしてるという感覚があった。たぶんこれも、私が肉体を持ってるからなんじゃないかな。

疲労が蓄積していくにも拘らず、費やした労力に見合う景色の変化がないことでそれが徒労感になって、『飽きた~!』っていう気分になってるのかもしれない。それに対してリリアテレサは完全なロボットだから疲れるということもない訳で、まったく気にならないんだと思う。

そこにようやくモーテルが見えてきたことで、私はホッとするのを感じてた。

「シャワー浴びたい…お風呂浸かりたい……」

ついそんなことを言ってしまう。

「そうだな…休憩しよう」

そう言ってくれたリリアテレサだけど、同時に警戒を始めたのも分かった。人間がいたところには同時にCLS患者が残ってる可能性もあるということだ。彼女もそれを警戒していたんだ。

でもそこにいたのは、<CLS患者>じゃなかった。二メートル以上は確実にある体高。大きな岩のようにさえ見えるボリュームのある体躯。太くねじくれた角。しかもそれは一頭じゃなかった。モーテルの敷地内からぞろぞろと五頭が出てきた。

「バッファローか…」

リリアテレサがそう言った。バッファローと言っても当然、<動く死体>、つまりCLS患畜という訳だけど。

森林地帯で遭遇した鹿と違ってこちらは人間が家畜として持ち込んだものだ。赤身肉をとる為に品種改良されて大型化したその体は、優に一トンを超える。しかも、やっぱり頭蓋骨がすごく頑丈で、リリアテレサが持ってきた小口径の拳銃じゃ十分なダメージを与えるのは難しそうだった。

「…やはりどこかでショットガンかライフルを手に入れておくべきだったかな…」

と言いながらも、私も彼女もあることに気が付いていた。バッファローが出てきたモーテルからある<信号>が発信されていたんだ。

その信号が何なのかは、私達はすぐに察していた。軍用車両の識別信号だ。それと、メンテナンス用トレーラー。

これが意味するものを私達は知ってる。CLS患者や患畜を<処置>する為に投下されたロボット達の<拠点>となるべく用意されたものだ。それがモーテルの敷地内にある。そしてそこにはおそらく強力な武器もある。

ロボットの反応がないのは、どこかに移動したか故障して停止したかだと思う。

「…動くな。じっとしてろ。私があいつらを引きつける。その隙にモーテルに入って、武器を探してくれ」

リリアテレサの指示に、私は黙って頷いたのだった。

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