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リリア・ツヴァイの章
当てのない旅
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アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士が生み出そうとしている新たな人間社会に私達が関わる可能性は決して高くない。
博士は、『メンテナンスについては永久保証。いつでもメンテナンスを受けに来てくれればいい』とは言ってたけど、正直、ディーラーとかに立ち寄ればメンテナンス用の設備も大抵残っていて、部品の交換も含めたフルメンテナンスでさえなければ問題なく受けられた。
リリアテレサ達メイトギアを含むロボットに使われてる部品の耐用年数は、バッテリーなどの一部の例外を除けば千年単位。骨格(フレーム)を構成する素材に至っては一万年単位の耐久性があるから、通常メンテナンスさえマメに受けてればトラブルはほとんど生じない。バッテリーは百年単位で交換が必要だけど、最悪、<キャパシタ>って呼ばれる補助バッテリーが無事なら、アミダ・リアクターが普及したおかげで、個人の住宅や店舗とかが無事な場所にいる限りはどこに行っても電気に困らない訳で、無給電では半日くらいしか動けなくなるくらいで実はそれほど困らないんだよね。
<キャパシタ>は蓄えられる電気が少ないという欠点がある代わり、化学物質の反応を利用したタイプのバッテリーと比べても経年による劣化が殆どないっていう利点があるし。
それに大体のところでは無線給電装置も備えてるから、アミダ・リアクターが備えられた施設の近くにいればそれで勝手に充電できるんだよね。昔は大型の発電施設から送電された電気を買ってたそうだけど、今はリアクターさえ買えばそれこそ使い放題の垂れ流しだったりする。<電気を買う>という概念は遠い過去になりつつあるそうだ。
な~んてことを考えながら、破壊された都市を迂回して私達は先を目指した。取り敢えずは東へと。
別に目的はない。私達が最初にいたのが西の方だったから東に向かってるだけだ。東の果てに付けば今度は南か北を目指すことになる。それもどっちでもいい。地面に放り投げたコインの裏表で決めたっていい程度の話だ。
この惑星を記録するという目的はあるけど、行く当てはない旅だからね。まあ、人間の体を持つ私が行けないところには行かないと思うけど。極地とかに行くにはそれなりの装備をしないといけないし。
それはさて置いて、歩き続けて夕方になると、さすがに人間の体を使ってる私は疲労が蓄積してそれ以上歩くのがままならなくなってしまった。だからリリアテレサが引いてるリアカーの荷台で休ませてもらう。彼女は純粋なロボットだから、疲れるということがないし。
きい、きい、という、リアカーの車体が出す小さな音を聞きながら、私は荷台に横になって、星が瞬き始めた夕暮れの空を眺めてたのだった。
博士は、『メンテナンスについては永久保証。いつでもメンテナンスを受けに来てくれればいい』とは言ってたけど、正直、ディーラーとかに立ち寄ればメンテナンス用の設備も大抵残っていて、部品の交換も含めたフルメンテナンスでさえなければ問題なく受けられた。
リリアテレサ達メイトギアを含むロボットに使われてる部品の耐用年数は、バッテリーなどの一部の例外を除けば千年単位。骨格(フレーム)を構成する素材に至っては一万年単位の耐久性があるから、通常メンテナンスさえマメに受けてればトラブルはほとんど生じない。バッテリーは百年単位で交換が必要だけど、最悪、<キャパシタ>って呼ばれる補助バッテリーが無事なら、アミダ・リアクターが普及したおかげで、個人の住宅や店舗とかが無事な場所にいる限りはどこに行っても電気に困らない訳で、無給電では半日くらいしか動けなくなるくらいで実はそれほど困らないんだよね。
<キャパシタ>は蓄えられる電気が少ないという欠点がある代わり、化学物質の反応を利用したタイプのバッテリーと比べても経年による劣化が殆どないっていう利点があるし。
それに大体のところでは無線給電装置も備えてるから、アミダ・リアクターが備えられた施設の近くにいればそれで勝手に充電できるんだよね。昔は大型の発電施設から送電された電気を買ってたそうだけど、今はリアクターさえ買えばそれこそ使い放題の垂れ流しだったりする。<電気を買う>という概念は遠い過去になりつつあるそうだ。
な~んてことを考えながら、破壊された都市を迂回して私達は先を目指した。取り敢えずは東へと。
別に目的はない。私達が最初にいたのが西の方だったから東に向かってるだけだ。東の果てに付けば今度は南か北を目指すことになる。それもどっちでもいい。地面に放り投げたコインの裏表で決めたっていい程度の話だ。
この惑星を記録するという目的はあるけど、行く当てはない旅だからね。まあ、人間の体を持つ私が行けないところには行かないと思うけど。極地とかに行くにはそれなりの装備をしないといけないし。
それはさて置いて、歩き続けて夕方になると、さすがに人間の体を使ってる私は疲労が蓄積してそれ以上歩くのがままならなくなってしまった。だからリリアテレサが引いてるリアカーの荷台で休ませてもらう。彼女は純粋なロボットだから、疲れるということがないし。
きい、きい、という、リアカーの車体が出す小さな音を聞きながら、私は荷台に横になって、星が瞬き始めた夕暮れの空を眺めてたのだった。
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