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リリアテレサの章

終わりへの歩み

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大陸を東西に分断する山脈を抜けて、私とリリア・ツヴァイは大陸の東側にやってきた。高地はまだ抜けきっていないから、見晴らしのいいところに来るとかなり先まで一望することができる。

「……」

けれどそこにあったのは、やはり徹底的に破壊しつくされた都市の痕跡だった。私の隣でそれを見詰めるリリア・ツヴァイの表情が悲しげなものになってるのが分かる。胸が締め付けられて痛むのも。

「……」

彼女のその感覚が私にも私にも伝わってくることで、本来は痛む筈のない私の胸まで痛んでいるかのような錯誤が生じている。

胸が…苦しい……

どうしてこんなことになってしまったんだろう……

この惑星には、一億人を大きく超える人間が住んでいたという。けれど、その殆どが死に絶えた。CLSに感染し、動く死体と成り果て、都市部にいた者はロボット艦隊による衛星軌道上からの徹底した爆撃で。爆撃を免れた者も、投下されたロボットによって処置を受けて、ことごとく塵と化した。

それがどれほどのことか、ロボットである私が感覚として理解できる筈はなかった。できない筈なのに……

「……」

いつしか私は、その場にうずくまり、視線を落としていた。麓に広がる光景を見ていることができなかった。

そんな私の体を、リリア・ツヴァイが抱き締めてくれる。彼女は、以前の都市を見たことで、ある程度は冷静に受け止めることができてたようだ。

それでも、胸が痛い……苦しい……

ロボットである私は、いくら体を抱き締め撫でてもらえたところでそれで気持ちが癒えることはない。ない筈なのに、不思議と胸の痛みが和らいでいくような気がした。

それは、私を抱き締め撫でることで、彼女自身も癒されていっているからだろうか……



三十分くらいそうして、ようやく私は立ち上がることができた。今でも胸を締め付けられるような感覚はあるけれど、もう大丈夫だと思う。

再び歩き出した私達の視線の先にある光景。それもまた、この惑星ほしの現実なんだ。

私はそれも含めて記録する為にこの旅を始めたんだ。

博士の最後の地でもあるここは、未曽有の大災害の現場でもある。私もそれを記録としてとどめよう。

いずれ私が故障して動けなくなっても、バックアップ用のストレージにはデータが残る。もし誰かがそれをサルベージすれば、この惑星ほしで何があったのかということを知る一助にはなるかもしれない。

主人を失い目的を失った私にできることは、それくらいだ。

だから私は歩く。歩き続ける。いつか来る終わりに向けて。

もう一人の私である、リリア・ツヴァイと共に……



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