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魔獣ヴァドリフス
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「<魔獣ヴァドリフス>は、大きなトカゲの魔獣だそうです。力が強く動きが素早く、しかも皮膚が固くて矢が刺さらない。加えて爆炎系の魔法の呪文を聞き分ける上に爆弾の臭いを嗅ぎわけるらしく、罠にもかからない。厄介な魔獣だと聞いています」
取り敢えず現時点で分かってることをアガルトライツが教えてくれる。なのにリョウは、
「そんなもん、真っ向からぶちのめしゃいい!!」
の一点張りだ。まったく、困った奴だよ。とは言え、こいつの力自体は本物だから、うまく使えれば頼りにはなる。
そんなリョウを、少し困ったような目で見てるバグレスは、
「若いな。少し前のアギーを思い出す」
と、イケボで呟いた。思った以上のイケボだったからちょっと驚いたぞ。しかも声が強い、間違いなく強キャラだ。<核バズーカ>を撃ってきそうな。
そんなバグレスに、<アギー>と呼ばれたアガルトライツは、
「昔の話はやめてほしいな」
苦笑いだが、そんな様子も『イケメン』だ。<イケメン罪>でギルティだ!
とは思うものの、今の俺も見た目だけは<可愛いショタ>なんだよな。あんまり自覚ないけど。
そんな俺達に、バグレスが話し掛ける。
「アギーも、少し前までは血気盛んで自身に満ち溢れた冒険者だった。だが、そういう若い奴にはありがちな過信で無理をして、仲間を一人、死にかけさせた。魔獣の力を見くびったんだ。よくある話さ。幸い、仲間は助かったが、その後しばらくアギーは見る影もなく落ち込んでな。『冒険者をやめる』とまで言い出した。しかし、失敗ってのは誰もがすることだ。もしその仲間が死んでたとしても、それを理由にこいつが冒険者をやめたら、それこそ何のために死んだか分からない。
生き残った者は、死んでいった者達の無念を背負う義務があるんだ。俺も、こっちのアガルラもそうだ。アギーの両親の分までこいつを守り育て上げるのが俺達の役目であり義務なんだ」
「……」
アガルラと呼ばれた方の<魔法使い>らしき男の方は、第一印象では神経質そうにも見えた顔がなんだか和らいで、ゆっくりと頷いた。この時の表情がアガルトライツとどこか似ていて、『兄弟かな』とふと思った。ただ、相手がそれに触れてこないならこちらからってのも無神経かと思い俺は黙ってようと思ったんだが、
「ところでお前とお前は、兄弟なのか? 似てるな」
リョウがまた、アガルラとアガルトライツを交互に指差しながら剛速球火の玉ストレートで突っ込んできやがった。
『こいつはもう…ホントに……』
取り敢えず現時点で分かってることをアガルトライツが教えてくれる。なのにリョウは、
「そんなもん、真っ向からぶちのめしゃいい!!」
の一点張りだ。まったく、困った奴だよ。とは言え、こいつの力自体は本物だから、うまく使えれば頼りにはなる。
そんなリョウを、少し困ったような目で見てるバグレスは、
「若いな。少し前のアギーを思い出す」
と、イケボで呟いた。思った以上のイケボだったからちょっと驚いたぞ。しかも声が強い、間違いなく強キャラだ。<核バズーカ>を撃ってきそうな。
そんなバグレスに、<アギー>と呼ばれたアガルトライツは、
「昔の話はやめてほしいな」
苦笑いだが、そんな様子も『イケメン』だ。<イケメン罪>でギルティだ!
とは思うものの、今の俺も見た目だけは<可愛いショタ>なんだよな。あんまり自覚ないけど。
そんな俺達に、バグレスが話し掛ける。
「アギーも、少し前までは血気盛んで自身に満ち溢れた冒険者だった。だが、そういう若い奴にはありがちな過信で無理をして、仲間を一人、死にかけさせた。魔獣の力を見くびったんだ。よくある話さ。幸い、仲間は助かったが、その後しばらくアギーは見る影もなく落ち込んでな。『冒険者をやめる』とまで言い出した。しかし、失敗ってのは誰もがすることだ。もしその仲間が死んでたとしても、それを理由にこいつが冒険者をやめたら、それこそ何のために死んだか分からない。
生き残った者は、死んでいった者達の無念を背負う義務があるんだ。俺も、こっちのアガルラもそうだ。アギーの両親の分までこいつを守り育て上げるのが俺達の役目であり義務なんだ」
「……」
アガルラと呼ばれた方の<魔法使い>らしき男の方は、第一印象では神経質そうにも見えた顔がなんだか和らいで、ゆっくりと頷いた。この時の表情がアガルトライツとどこか似ていて、『兄弟かな』とふと思った。ただ、相手がそれに触れてこないならこちらからってのも無神経かと思い俺は黙ってようと思ったんだが、
「ところでお前とお前は、兄弟なのか? 似てるな」
リョウがまた、アガルラとアガルトライツを交互に指差しながら剛速球火の玉ストレートで突っ込んできやがった。
『こいつはもう…ホントに……』
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