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魔獣ファダルフォン

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<魔獣ファダルフォン>

それが、その村の近くに現れるようになったという魔獣の名前だった。そいつは、でかい鳥の魔獣だそうだ。でかすぎて飛べなくなってるそうだが。

元々は、<ダルフォン>って名前の、鷲に似た猛禽類的な鳥なんだと。それが魔獣化して人を襲い、巨大化。並みの猛獣よりも強いから空を飛んで逃げる必要もなくなったことで、我が物顔で居座ってるらしい。

正直、話を聞いてるだけじゃ、軍が<いしゆみ>でも用意して取り囲み、一斉射して弱らせたところに火矢でも射かけてやりゃ倒せそうな気がする。もちろん素人がそれだけの準備をするとなりゃ大変だし、たぶん、武器を用意するだけでもヴォーンローグ銀貨二百枚程度じゃ済まないだろう。

加えて軍はすぐには来てくれない。だから冒険者に依頼する。

そういうことだ。

村から街に産品を届けその帰りに村への物資の輸送を行う馬車に便乗して向かい、

「あんたらが、冒険者……?」

あからさまにがっかりした様子の村長に、

「まあ取り敢えず任せてください」

俺は笑顔で応える。ギルドに支払う仲介料を含むヴォーンローグ銀貨二百二十枚を用意して雇った冒険者が、<細っこいショタ>と<変な恰好をした小娘>じゃ、そりゃそんな様子にもなるだろう。だから結果を出してみせるしかない。

で、村からも見える見晴らしのいい高台に巣食っているという<魔獣ファダルフォン>をとにかく確かめるために、まずは<威力偵察>に出る。

だいたいのところは聞いてるし予測はしてるものの、現物と実際の能力を確認した上で無理なく確実に仕留めたい。

が、

「ふふふ~ん♪」

リョウは久しぶりに暴れられるってんで鼻歌交じりのご機嫌だ。まったく。緊張感のない奴だよ。

なるほど、場合によっちゃこの威力偵察で片付けてしまう可能性もあると考えては向かってるが、しかしあんまり舐めてると痛い目みるぞ。とは思うかな。

と、高台の麓に辿り着いたその時、俺達の視界に、でかい影が。地面すれすれを滑空してくる、幅十五メートルくらいの、鳥。

「ファダルフォンか!?」

俺は叫んだ。まあ、このサイズの鳥は存在しないはずだから、間違いないだろう。しかし空は飛べないと聞いてたが……?

なるほど、『飛んでる』と言うよりは、

<地面効果を活かした滑空>

ってことか。しかも、高いところから低いところへ向けて『落ちてる』形になるから、加速もできると。

このために見晴らしのいい開けた高台を陣地に選んだか。これにより相手の出鼻をくじき、戦いを有利に進めようという感じだな。

こいつ、思ったよりも頭もよさそうだぞ。

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