上 下
40 / 100
魔獣ハゲアリハゲナシハゲハゲ

40ページ

しおりを挟む
『よし! 送ってくれ!!』

リシャールを通じてリョウに伝えると、また俺の中でカアッと熱のような圧力のようなものがものすごい勢いで回転し始めるのを感じる。

「ぐ……くそ……」

呼吸ができない状態でのそれは正直、無理があった。意識が途絶えて、ブラックアウト。そして再生して再度挑戦。こうして何度も魔力を溜めていってもらうことにする。

まったくもって俺でなきゃできない役目だった。シャミールが万全な状態なら同じようにできたかもしれないが、今は俺しかできない。

こうして五回目にしてようやく、

「よし、行くぞ! 覚悟しろ!!」

リシャールが言ってきた。リョウの魔力が十分に溜まり、ス〇ナーサンシャインを放つという合図だった。まったく。これなら爆散した方が楽だったな。

なんて思っていると、途轍もない熱が押し寄せてきて、俺の体も焼かれて蒸発していくのが分かった。飲み込まれた俺ごとス〇ナーサンシャインで消し飛ばされていってるんだ。

『ああ……よかった……成功したんだな……』

と察すると同時に、俺の意識も消えていったのだった。



で、次に意識が戻った時に俺がいたのは、体の半分以上が消し飛んだハゲアリハゲナシハゲハゲの死体の上だった。

「やれやれ……やっとか……」

ようやく片付いたことを悟り、俺もホッとする。しかし、あれだけのことをして溜めた魔力で放ったス〇ナーサンシャインでも、完全には消し飛ばせないとは、本当に大した頑丈さだな。ハゲアリハゲナシハゲハゲ。

その後、残った死体を開けたところまで引きずって、放置する。勝手に魔素となって消えていくのを待つしかどうしようもないからな。

そして、プリムラ達と合流する。と、

「……」

プリムラが俺を見るなり抱き付いてきた。

『何事……?』

と思ったが、彼女は泣いているようだった。しかも、俺が帰ってきて嬉しくて泣いてるってって言うより、たぶんこれは同情の涙だ。<魔力増幅炉>として死んだはずの俺に対する同情だな。

つらい役目を果たした俺に同情して泣いてるんだ。

でもまあ、大変だったのは事実だが、はっきり言って死に慣れてるんだよな。だから、別にもう、つらくはない。

いや……『死に慣れているからつらくない』ってのも、考えてみりゃおかしな話か……

「ありがとう……気にしてくれてるんだな……」

プリムラのその感情は、俺がもう長らく忘れていたもののような気がする。たとえ綺麗事だったとしてもそういう感覚を持ってるのがいるってのは、大事なことなのかもな……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

魔法少女の青担当だけど他の子たちが残念すぎるので一人でやってくことにしました

天宮暁
ファンタジー
わたし――雫石澪(しずくいし・みお)は、悪と戦う魔法少女カレイドナイツの青担当だ。みんなのマスコット……もとい、選定者であるキラりんに導かれ、カレイドアズールとして悪の組織ネオフロンと戦う日々を送ってる。 一見、順調に見える敵との戦い。でも、わたしはずっと不安だった。わたしたちはいつもネオフロンの怪人=デスペアードに逆転勝利を収めてるけど、毎回毎回こんな綱渡りをしてたら、いつか負ける日が来るのではないか――と。 だからずっと、カレイドナイツのみんなに注意を促してきたんだけど、みんなはわたしの警告をうっとうしそうに聞き流すばかり……。 そんななか、ついにわたしの想定していた最悪の事態が起こってしまう。本気になったネオフロンが、四天王総出の上、デスペアードを一度に十数体も動員して、わたしたちを潰しにかかったのだ。カレイドナイツはあっというまに壊滅。しかも、力を合わせた四天王によって、カレイドナイツは既に滅びた世界へと飛ばされることになってしまった。 でも、そんなわたしたちを、とある女神がギリギリのところで救い出してくれた。女神は、わたしたちのこれまでの戦いに報いるために、別の世界に転移させてくれるって言うんだけど…… 転移先についてなにか希望はないかと女神に問われ、わたしはきっぱりと答えていた。 「……わたしだけ別の場所に降ろしてください」 そう。他の子たちがあまりにも残念すぎるので、わたしは一人でやってくことに決めたのだ――

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

黒白の魔法少女初等生(プリメール) - sorcier noir et blanc -

shio
ファンタジー
 神話の時代。魔女ニュクスと女神アテネは覇権をかけて争い、ついにアテネがニュクスを倒した。力を使い果たしたアテネは娘同然に育てた七人の娘、七聖女に世の平和を託し眠りにつく。だが、戦いは終わっていなかった。  魔女ニュクスの娘たちは時の狭間に隠れ、魔女の使徒を現出し世の覇権を狙おうと暗躍していた。七聖女は自らの子供たち、魔法少女と共に平和のため、魔女の使徒が率いる従僕と戦っていく。  漆黒の聖女が魔女の使徒エリスを倒し、戦いを終結させた『エリスの災い』――それから十年後。  アルカンシエル魔法少女学園に入学したシェオル・ハデスは魔法は使えても魔法少女に成ることはできなかった。異端の少女に周りは戸惑いつつ学園の生活は始まっていく。  だが、平和な日常はシェオルの入学から変化していく。魔法少女の敵である魔女の従僕が増え始めたのだ。

処理中です...