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魔獣ハゲアリハゲナシハゲハゲ
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そんなこんなで準備も終わり、テストも終わり、改めてハゲアリハゲナシハゲハゲの前に立つ。すると猛然と襲い掛かってきた。狭い街道をその巨体で塞ぐようにして。
だが今回は、前回とは違うぞ。
「行くぞ! 覚悟はいいな!?」
リョウが問い掛けてくるのを、俺も、
「もちろん!!」
と応える。そして、リョウが俺を魔力増幅炉として使うための術式を発動させる。瞬間、テストの時よりもさらにすさまじい力が俺の中を駆け巡った。
と、
「ガアッ!!」
自分でも獣のような声を上げたのが分かったと同時に、暗転。意識が途絶えた。で、次に気付いた時には、
「ん……? なんだここは……!?」
俺は、真っ暗で、しかもやたらとヌメヌメした粘膜に包まれた場所にいた。満足に呼吸もできず、意識が途絶える。が、当然、すぐさま再生、意識を取り戻す。なのに呼吸ができずにやはり意識を失う。
そうして三度目でようやく、
「まさかこれ、ハゲアリハゲナシハゲハゲに食われたのか……!?」
と気付く。三度目でようやくとはいえど、たぶん、こうやって気付けるのも俺が経験者だからだろう。魔獣に丸呑みされるのは別に初めてじゃないからな。
だが、こうしてハゲアリハゲナシハゲハゲに食われたということは、リョウは失敗したのか。
と、そこに、
「おい! 生きてるか!?」
という声。
「リシャールか!?」
俺が応えると、
「ああ! そうだ!」
ってことだったので、
「何があった?」
説明を求める。するとリシャールが、
「魔力増幅が急すぎてお前の体がすぐに破裂したんだ。それで十分に魔力を貯めきれず、失敗した。お前は再生したが、その途端に魔獣に食われたと、リョウが言ってる」
解説してくれた。
「今、俺がお前とリョウの伝言役をしてる。リョウは無事だが、決め手に欠けてジリ貧だ」
「そりゃそうだろうな。となると、俺はここから何とか脱出しないといけないってわけか」
そこまで応えたんだが、呼吸ができなくてまた意識を失った。
そして再生。
「ファロ! おい、ファロ!!」
「すまん、今再生したところだ! で、どうすりゃいい!?」
「それなんだが、別にそのままでもいい。俺を仲介して魔力のパスをリョウがお前に送る! お前に術式を刻んだ時にリョウの方がそれをちゃんと覚えてるから、パスだけ通せば術式は発動するそうだ! 少しの間でいい! 意識を途切れさせるな!」
「そうは言われても、説明聞いてるだけでもう駄目だ。次に再生した時に頼む……!」
と、我ながらもう無茶苦茶である。今の俺にとっての<死>はただの<状態>に過ぎないってのを改めて実感する。
そして俺はいったん死んで再生し、
「よし! 送ってくれ!!」
合図を出したのだった。
だが今回は、前回とは違うぞ。
「行くぞ! 覚悟はいいな!?」
リョウが問い掛けてくるのを、俺も、
「もちろん!!」
と応える。そして、リョウが俺を魔力増幅炉として使うための術式を発動させる。瞬間、テストの時よりもさらにすさまじい力が俺の中を駆け巡った。
と、
「ガアッ!!」
自分でも獣のような声を上げたのが分かったと同時に、暗転。意識が途絶えた。で、次に気付いた時には、
「ん……? なんだここは……!?」
俺は、真っ暗で、しかもやたらとヌメヌメした粘膜に包まれた場所にいた。満足に呼吸もできず、意識が途絶える。が、当然、すぐさま再生、意識を取り戻す。なのに呼吸ができずにやはり意識を失う。
そうして三度目でようやく、
「まさかこれ、ハゲアリハゲナシハゲハゲに食われたのか……!?」
と気付く。三度目でようやくとはいえど、たぶん、こうやって気付けるのも俺が経験者だからだろう。魔獣に丸呑みされるのは別に初めてじゃないからな。
だが、こうしてハゲアリハゲナシハゲハゲに食われたということは、リョウは失敗したのか。
と、そこに、
「おい! 生きてるか!?」
という声。
「リシャールか!?」
俺が応えると、
「ああ! そうだ!」
ってことだったので、
「何があった?」
説明を求める。するとリシャールが、
「魔力増幅が急すぎてお前の体がすぐに破裂したんだ。それで十分に魔力を貯めきれず、失敗した。お前は再生したが、その途端に魔獣に食われたと、リョウが言ってる」
解説してくれた。
「今、俺がお前とリョウの伝言役をしてる。リョウは無事だが、決め手に欠けてジリ貧だ」
「そりゃそうだろうな。となると、俺はここから何とか脱出しないといけないってわけか」
そこまで応えたんだが、呼吸ができなくてまた意識を失った。
そして再生。
「ファロ! おい、ファロ!!」
「すまん、今再生したところだ! で、どうすりゃいい!?」
「それなんだが、別にそのままでもいい。俺を仲介して魔力のパスをリョウがお前に送る! お前に術式を刻んだ時にリョウの方がそれをちゃんと覚えてるから、パスだけ通せば術式は発動するそうだ! 少しの間でいい! 意識を途切れさせるな!」
「そうは言われても、説明聞いてるだけでもう駄目だ。次に再生した時に頼む……!」
と、我ながらもう無茶苦茶である。今の俺にとっての<死>はただの<状態>に過ぎないってのを改めて実感する。
そして俺はいったん死んで再生し、
「よし! 送ってくれ!!」
合図を出したのだった。
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