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プリムラ
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「確かに俺達は、他の頭を食われた連中とは全く関係ない……二人で旅をしてたら魔獣ギアルゲフに襲われただけだ……ただ、俺は意識を取り戻したが、妹は、かすかに意識は感じるんだが、しゃべれるまでには回復しなかった……再生者としての能力も完全には働かないらしい……人間の頭を食って取り込むギアルゲフの能力が影響してるのかもしれない……
最初は、絶望したよ……ただでさえ再生者だってんで周りからは気持ち悪がられて村を追われたってのに、その上にこの仕打ちかってな……だけど、時間が経つとそれもどうでもよくなってきて、もうギアルゲフとして生きていくことにしたんだ。
ならいっそ、シャミーレに女王になってもらって、群れを乗っ取ろうと……でもさすがに、俺とシャミーレの二人だけじゃ勝てそうもなかったから、あんた達を利用させてもらおうと……」
そう語るリシャールに、俺は、
「で、憎い人間を襲って復讐しようと?」
問い掛ける。けれどそれには、
「! 違う!! 俺達はそんなつもりは……! 普通に獣を狩って、野生の獣として生きていくつもりだったんだ……!」
だと。
「……まあ、そういうことなら別にいいだろ。他の人間が襲われてるのを見過ごしてたのも、二人だけじゃどうしようもなかったんだろうしな。俺にそれを責める資格も権限もないし」
そんなわけで俺にとってはこれでもう終わりだった。だが、その時、
「おい、お前、なんか生えてきてないか?」
リシャールの後ろに立ってたリョウが、そんなことを。
「え……?」
俺とリシャールが揃って声を上げて、俺はリシャールの後ろに回った。するとそこには、ギアルゲフとしての首の断面に、何か、尻尾の短い小さなトカゲの胴体のようなものが繋がってるのが見えて。
瞬間、ピンとくる。
「これ、胎児の体か……?」
呟いた俺に、
「<胎児>? なんだそれ……?」
リシャールが問い掛ける。
「人間が母親の胎ん中で育ってる時の状態だよ。最初はこんな風に尻尾が生えてるんだ。それが大きくなるにしたがって普通の赤ん坊の形になっていくんだが、もしかして、普通の再生ができないから胎児の状態から再生してるってことか……?」
俺の言ったことはただの推論だが、
「言われてみれば確かに、なんかすごく頼りないが体があるのも感じる……」
だと。見ればシャミーレの方にも、同じように小さな体が。
「もしかしたら、時間が経てば人間としての体が再生できるかもしれない。正直、どうやってとどめを刺せばいいのか分かんなかったが、こうなるとさすがに忍びないか」
そんなわけで、俺は、リシャールとシャミーレも連れていくことにしたのだった。
最初は、絶望したよ……ただでさえ再生者だってんで周りからは気持ち悪がられて村を追われたってのに、その上にこの仕打ちかってな……だけど、時間が経つとそれもどうでもよくなってきて、もうギアルゲフとして生きていくことにしたんだ。
ならいっそ、シャミーレに女王になってもらって、群れを乗っ取ろうと……でもさすがに、俺とシャミーレの二人だけじゃ勝てそうもなかったから、あんた達を利用させてもらおうと……」
そう語るリシャールに、俺は、
「で、憎い人間を襲って復讐しようと?」
問い掛ける。けれどそれには、
「! 違う!! 俺達はそんなつもりは……! 普通に獣を狩って、野生の獣として生きていくつもりだったんだ……!」
だと。
「……まあ、そういうことなら別にいいだろ。他の人間が襲われてるのを見過ごしてたのも、二人だけじゃどうしようもなかったんだろうしな。俺にそれを責める資格も権限もないし」
そんなわけで俺にとってはこれでもう終わりだった。だが、その時、
「おい、お前、なんか生えてきてないか?」
リシャールの後ろに立ってたリョウが、そんなことを。
「え……?」
俺とリシャールが揃って声を上げて、俺はリシャールの後ろに回った。するとそこには、ギアルゲフとしての首の断面に、何か、尻尾の短い小さなトカゲの胴体のようなものが繋がってるのが見えて。
瞬間、ピンとくる。
「これ、胎児の体か……?」
呟いた俺に、
「<胎児>? なんだそれ……?」
リシャールが問い掛ける。
「人間が母親の胎ん中で育ってる時の状態だよ。最初はこんな風に尻尾が生えてるんだ。それが大きくなるにしたがって普通の赤ん坊の形になっていくんだが、もしかして、普通の再生ができないから胎児の状態から再生してるってことか……?」
俺の言ったことはただの推論だが、
「言われてみれば確かに、なんかすごく頼りないが体があるのも感じる……」
だと。見ればシャミーレの方にも、同じように小さな体が。
「もしかしたら、時間が経てば人間としての体が再生できるかもしれない。正直、どうやってとどめを刺せばいいのか分かんなかったが、こうなるとさすがに忍びないか」
そんなわけで、俺は、リシャールとシャミーレも連れていくことにしたのだった。
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