上 下
27 / 100
リシャールとシャミーレ

27ページ

しおりを挟む
「ここだ。どうせもう俺達には使いようもないものだし、要るものがあれば何でも持っていってくれ。金も少しはあると思う」

「分かった。じゃあ、遠慮なく」

こういう時には多少躊躇ったりするのがお約束かもしれないが、俺ももうこの世界で十三年も生きてきた上に<死ねない者>なんかになっちまったから、その程度のことを躊躇ったりもしない。

野垂れ死んだ奴らの持ち物を拾っていくなんてことも別に珍しいことでもない。魔獣デルセムに襲われた集落でも剣以外にも食糧とかはいただいてきた。基本的に警察機構が十分に機能してないんだよ。ほとんどの国は。

司法もいい加減なものだしな。

そんなわけで、俺はテントを順に覗いていった。

一方、リョウは、

「お、食いもんめっけ♡」

さっきは『こんなメンドクセエことしてないで一気にツッコもうぜ』とか言ってたクセに糧食の干し肉を見付けた途端に齧りついてた。

「やれやれ……」

呟きながらも俺も同じように干し肉を見付けたことでそれを齧りながら荷物を漁る。

「ナイフ……ファイヤースターター……コッヘル……お、これは爆弾か? ちょうどいい」

一張り目のテントの中で俺はナイフと爆弾を手に入れた。魔獣デルセムを相手にした時に手持ちの爆弾を結構使ったからな。ありがたい。

続けて二張り目のテントでは、

「銀貨か……まあ、ないよりはマシだな。なんかの時に使えるだろ」

小袋に入った銀貨数十枚を見付けて、いただいておく。報酬だと思えばむしろ安いもんだ。

三張り目のテントには、

「おお、剣が残ってるじゃないか。しかもおあつらえ向きのファルシオンか!」

<ファルシオン>ってのは、ナイフと剣の間くらいの大きさで、割と使い勝手のいい武器だった。俺の力なら片手でも十分に扱えるから両手に一本ずつ持つこともできる。

これの持ち主も同じような使い方をしていたのか、ご丁寧に二本ある。今使ってるやつが折れたりしたらすぐに代わりにできるな。と同時にここにも金が。

金ってのは実に便利な道具だ。前世じゃあるのが当たり前すぎて実感なかったが、物々交換すらまだ割と現役なここじゃ、手元に交換できるものがなくても金さえあれば品物が手に入るからな。本当に便利だよ。役人とかへの袖の下にも使えるし。

で、最後の四張り目には、どうやら文字の読み書きができる奴がいたらしくて、<日記>が残されていた。しかも几帳面な奴なのか、毎日書いてたようだ。

俺は、何気なくそれを開いて読んでみた。

「……ふ~ん……」

こいつらは、旅をしながら<便利屋>みたいなこともしてたみたいだな。業務日誌みたいな内容でもあったんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。 なんか気が付いたら目の前に神様がいた。 異世界に転生させる相手を間違えたらしい。 元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、 代わりにどんなものでも手に入るスキルと、 どんな食材かを理解するスキルと、 まだ見ぬレシピを知るスキルの、 3つの力を付与された。 うまい飯さえ食えればそれでいい。 なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。 今日も楽しくぼっち飯。 ──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。 やかましい。 食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。 貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。 前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。 最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。 更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。

オークに転生! フィジカル全振りは失敗ですか?

kazgok
ファンタジー
身の丈4メートルのオークに転生してしまった「彼」は、生まれた大森林からエルフに追い立てられ、逃げた先で可憐な姫に出合う。オークの軍団に襲われる自称「のじゃロリ姫」ことロジーナ姫を助けた「彼」は、特級冒険者の討伐隊を壊滅させたオークキングと戦う事になる。向かったオークの拠点には屈強な女戦士と豊満な女司祭が囚われていた……はたして「彼」は無限のパワーで未来を切り開けるか。

処理中です...