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魔獣ギアルゲフ

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こうして<魔獣デルセム>に襲われた集落の唯一の生存者である少女を連れて、俺達は旅を続けることになった。正直、俺には育児の能力なんてないのは分かってるから、できればどこかで保護してもらいたいと思ってる。

信用できそうな相手に任せられればと思うんだ。

無論、この世界でそんな信用できそうな大人に出逢えるかどうかは、まったく当てにならない。俺を<死ねない者>に改造した魔法使いもそうだし、ノーラを作ったジジイもそうだし、リョウの師匠とやらもイカれてたみたいだしな。

とは言え、だからってそんなイカれた連中しかないわけじゃないことも分かってる。

まっとうな人間だっているはずなんだ。この世界全部が殺伐としてるわけじゃないのも一応は知ってるしな。

女の子の世話については、この中では一番頼りになりそうなノーラにお願いすることになった。別にノーラが<女性>だからってわけじゃないぞ? そもそもノーラは、『女の子の死体を使ってる』っていうだけであくまでゴーレム。性別なんかない、魔法で動くロボットみたいなもんだ。メイドとしての機能を持ってるから、それだけ人間の世話には通じてるだろうってだけだな。

まあそれについては当たりで、ノーラは女の子を抱きかかえて疲れることなく歩いてくれた。女の子も、こうやって抱かれているのが安心できるだろう。

なお、ノーラは死体なので心臓は動いてない。生理現象もない。魔素と同じくこの世界では当たり前に存在する物質?<マナ>をエネルギーとして動く魔力機関によって維持されて腐ることがないってだけだ。

基本的には代謝による体温はないはずだが、動いていることで熱が生じているらしく、触ればそれなりにあたたかい。ただし、全力稼働した後は、今度は熱すぎるけどな。

なのに、<焼肉>状態にならないのがまた不思議だ。まあそれもゴーレムとして作られてるからだろう。

女の子は、ショックのあまりしゃべれなくなっている上に、ものすごく臆病になっている。それもあってノーラに任せきりだ。

そうして歩いてると、今度はまた、別の魔獣が。<でかい虫の魔獣>だ。

体長二メートルほど。見た目にはクモのようにも感じられるが、脚は四本だな。そして、手のようなものが、体の後ろの方から延びている。だから正確には六肢か。前二ついが<脚>で、後一ついが<腕>になってるという、奇妙な形態。

しかも、胸の部分とほぼ同化してるらしい頭は、上下逆になったかのように、顎が上で、目は下にある。

てか、たぶん、体そのものの天地が逆転してるんだろうな。

とにかく、人間の生理的嫌悪感を狙い撃ちしてきてるような異様さだ。

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