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旅立ちの前に
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キメラゴーレムの左腕を捩じ切ってからは、それこそもう一方的な蹂躙だった。ゴーレムの体を構成している魔法の術式の一部が失われたことでバランスが崩れ弱体化するのが、俺にさえ見えてしまった。
このキメラゴーレムであのジジイが満足しなかった理由が見えてしまった気がしたな。マーダーフラワーの触手が引きちぎられたまではそれほど影響もなかったようだが、サスカッチの腕が捩じ切られるほどの大きな損傷が発生するともうダメだってことだ。
それでも、キメラゴーレムの方もさらに炎を吐いたりして抵抗はするものの、まったく役には立たない。結局、バラバラに解体され、遂に動かなくなってしまった。術式そのものが崩壊したんだろう。
そしてノーラは、やっぱり川に入って体を洗い、あんな炎や劇薬にまみれた後とは思えないくらいまったく何ともない姿に戻って布で拭いて、持ってきたメイド服を着て、次へと移った。
が、その次の奴がまたとんでもなくて、
「あれ……まさか爆轟の魔石、か……?」
見た瞬間、
「ノーラ! やめろ!!」
と声を掛けたが、遅かった。彼女は容赦なく、
<全身が爆轟の魔石でできたゴーレム>
に殴り掛かり、瞬間、とんでもない爆発が起こって俺も一瞬で吹き飛んだ。だからそれ以降のことについては分からないが、たぶん、数百メートルは吹っ飛ばされた状態で再生し、見ると、きのこ雲のようなものが立ち上って、試作品のゴーレムが放し飼いにされていた小高い山に生えていた木はすべて吹き飛び丸ごと裸になっていたんだ。
<爆轟の魔石>というのは、まあ、読んで字のごとく、強い衝撃を加えると一瞬で気化してさらに爆轟と呼ばれる爆発燃焼を起こす魔石だ。
ストーンゴーレムを作る要領で作ったんだろうが、そもそも爆轟の魔石でそんなことをしようという発想が狂ってる。いわば、
<動く燃料気化爆弾>
だよ。それも特大の。
でも、これにより、残っていたゴーレムもすべて吹き飛んだようだ。そしてノーラはというと、真っ黒に焦げた地面から起き上がり、俺の方へ平然と歩いてきた。真っ黒に煤まみれの全裸でな。
本当にどうかしている。
で、取り敢えず試作品のゴーレムは片付いたらしいから屋敷に戻ったら、爆風をモロに食らったらしく、岩山をくりぬいて作った屋敷も半壊していて、作業中だった小型のストーンゴーレムもほとんどがバラバラになっていた。
「何をやってるんだか……」
俺は頭を抱えながらその場に佇んでいたんだが、そこに、
「お召し物を……」
半壊した屋敷の中からやはりメイド服をまとって出てきたノーラが、服を持ってき来てくれた。と言うのも、爆発に巻き込まれたことで俺も裸だったからな。
ただし、ノーラが持ってきたのは彼女のメイド服の一着。
仕方ないからそれを着たものの、
「スースーして落ち着かねえ……」
下着も着けずにメイド服だけを着た状態で屋敷を後にして旅に出たから、次に着替えるまで本当に情けない気分だったよ。
このキメラゴーレムであのジジイが満足しなかった理由が見えてしまった気がしたな。マーダーフラワーの触手が引きちぎられたまではそれほど影響もなかったようだが、サスカッチの腕が捩じ切られるほどの大きな損傷が発生するともうダメだってことだ。
それでも、キメラゴーレムの方もさらに炎を吐いたりして抵抗はするものの、まったく役には立たない。結局、バラバラに解体され、遂に動かなくなってしまった。術式そのものが崩壊したんだろう。
そしてノーラは、やっぱり川に入って体を洗い、あんな炎や劇薬にまみれた後とは思えないくらいまったく何ともない姿に戻って布で拭いて、持ってきたメイド服を着て、次へと移った。
が、その次の奴がまたとんでもなくて、
「あれ……まさか爆轟の魔石、か……?」
見た瞬間、
「ノーラ! やめろ!!」
と声を掛けたが、遅かった。彼女は容赦なく、
<全身が爆轟の魔石でできたゴーレム>
に殴り掛かり、瞬間、とんでもない爆発が起こって俺も一瞬で吹き飛んだ。だからそれ以降のことについては分からないが、たぶん、数百メートルは吹っ飛ばされた状態で再生し、見ると、きのこ雲のようなものが立ち上って、試作品のゴーレムが放し飼いにされていた小高い山に生えていた木はすべて吹き飛び丸ごと裸になっていたんだ。
<爆轟の魔石>というのは、まあ、読んで字のごとく、強い衝撃を加えると一瞬で気化してさらに爆轟と呼ばれる爆発燃焼を起こす魔石だ。
ストーンゴーレムを作る要領で作ったんだろうが、そもそも爆轟の魔石でそんなことをしようという発想が狂ってる。いわば、
<動く燃料気化爆弾>
だよ。それも特大の。
でも、これにより、残っていたゴーレムもすべて吹き飛んだようだ。そしてノーラはというと、真っ黒に焦げた地面から起き上がり、俺の方へ平然と歩いてきた。真っ黒に煤まみれの全裸でな。
本当にどうかしている。
で、取り敢えず試作品のゴーレムは片付いたらしいから屋敷に戻ったら、爆風をモロに食らったらしく、岩山をくりぬいて作った屋敷も半壊していて、作業中だった小型のストーンゴーレムもほとんどがバラバラになっていた。
「何をやってるんだか……」
俺は頭を抱えながらその場に佇んでいたんだが、そこに、
「お召し物を……」
半壊した屋敷の中からやはりメイド服をまとって出てきたノーラが、服を持ってき来てくれた。と言うのも、爆発に巻き込まれたことで俺も裸だったからな。
ただし、ノーラが持ってきたのは彼女のメイド服の一着。
仕方ないからそれを着たものの、
「スースーして落ち着かねえ……」
下着も着けずにメイド服だけを着た状態で屋敷を後にして旅に出たから、次に着替えるまで本当に情けない気分だったよ。
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