死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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救出

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「え…あ…?」

腹に熱した鉄の棒でも押し付けられたかのような熱さと痛みを感じながら、ゴードンの体がよろめいた。腹を押さえた手が真っ赤に染まっていた。血だ。彼が掴みかかったことで、自動小銃が暴発したのだ。

『事故発生! ただちにプランFに移行。サーシャを保護し速やかに撤退する!』

真ん中に立ってサーシャに話し掛けたメイトギアが彼女の体を抱き上げながら、そう発信した。

『了解。チームDデルタがフォローに向かう!』

返信を確認し、サーシャを抱きかかえたままメイトギアは校門を駆け抜けた。そこにワンボックスカーが停車し、素早く乗り込む。

「ゴードン! ゴードン!! いやあぁあぁぁっ!!」

泣き叫びながら、自分を抱えている手を振りほどこうとサーシャは暴れた。けれどメイトギア相手ではそれはまったく功を奏すことはなかった。どんなに力を入れてもびくともしない。彼女はただ、涙をこぼしながらゴードンの名を呼び続けるしかできなかった。

そんなサーシャに向かって、メイトギアはあくまで冷静に声を掛ける。

「サーシャ。あなたは今、メルシュ博士の洗脳を受けて正常な判断ができなくなっています。私達はそんなあなたを救いに来たんです」

しかし、サーシャの耳にはその言葉は届いていなかった。

それでも、メイトギア達の言葉に嘘はない。ロボットであるメイトギアは嘘を吐くということができない。彼女達は本当に、人間であるサーシャを救う為に行動しているのだった。サーシャを拘束しているのも、傷付けないようにする為だ。下手に暴れられて怪我をさせたくなかったのだ。だから柔らかく傷付きやすい少女の体を強く押さえることはせず、圧力が掛かるか掛からないかという、辛うじて触れている程度の位置で腕を固定して抜け出せないようにしているだけだった。シートベルトのようなものである。

「どうしてこんなことするの…!?」

時間が経って少し落ち着いたサーシャが目に涙を溜めて、しかし同時に強く睨み付けて自分の正面にいたメイトギアに向かってそう問い掛けた。それに対して、問い掛けられたメイトギアは静かに答えた。

「先ほども申し上げましたが、あなたは今、メルシュ博士の洗脳を受けて正常な判断ができなくなっています。私達はそんなあなたを救いに来たんです」

「洗…脳……?」

サーシャを乗せたワンボックスカーは幹線道路であった広い道を走り、かつてレストランであったと思しき店舗の駐車場に入って停車した。

「サーシャ、あなたに会わせたい人がいます」

戸惑うサーシャに対して、やはり静かに声が掛けられたのだった。

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