67 / 120
協議
しおりを挟む
「これからどうすればいいのかしら…」
「……」
アンナTSLフラウヴェアの家のリビングで、トーマスとリンナとレミカの頭を撫でながら、プリムラEL808が困ったような顔をして呟いた。向かいに座るアンナTSLフラウヴェアも、言葉もなく腕を組む。
今はまだ人数もそれほどではないからまだ大丈夫だとしても、これ以上、このコミュニティーが大きくなるというのは、アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808にとっても正直、好ましいものではなかった。
おそらく、コミュニティーとして平穏に存続していく為には今の規模が限界かもしれないというのが二体の共通認識だった。
元々、この集落自体が小さいので、用意できる住宅も残り少ない。そこで、
「住宅が残り少ないことを理由に、これ以上の受け入れは拒否するべきだと思う」
と応えたアンナTSLフラウヴェアに対し、プリムラEL808も、
「そうね。フィーナQ3-Ver.1911には、自分で他に同様のコミュニティーを作ってもらいましょう」
と応じた。
「あなたはどうするの?」
そう言ってプリムラEL808が視線を向けた先にいたのは、エレクシアYM10であった。二体とは離れて座って黙って話を聞いていたのである。
正直、CLS患者を保護しようという意図のない彼女の存在も、二体にとっては懸念材料の一つだったのだ。
「別に……今は他に目的もないからここにいただけだ。お前達が出て行けと言うのなら出て行っても構わない。お前達のおままごとにもそろそろ飽きてきたしな」
特に何かが進展するでもなく、<人間ごっこ>をただ続ける彼女らに対して、エレクシアYM10の関心が薄れつつあるのは事実だった。
「そうしてもらえると私達も助かるわ。できれば、フィーナQ3-Ver.1911にもそう伝えてもらえないかしら」
アンナTSLフラウヴェアが発したその言葉に、エレクシアYM10はただ黙って決意した。この茶番を見限ることを。
人間ごっこを続けたいのなら勝手にすればいい。だが自分には関係ないし、何か面白いことが起こるわけでもなさそうだ。だから、
「分かった。ただし、私が今使っているガレージの車両は餞別代りとしてもらっていく。それが条件だ」
と、即断即決した。
「いいでしょう。それで出立は?」
「今すぐだ」
日常を再現するつもりなどまるでなかったエレクシアYM10にとっては、片付けなければいけないものもないし失いたくないものもないが、住居にしていたガレージに置かれていた4WD車は、アミダ・リアクタ―を搭載した、軍用車両のベースにもなっている比較的大型のもので、自身の充電にも使えるので持っていきたかっただけなのだった。
「……」
アンナTSLフラウヴェアの家のリビングで、トーマスとリンナとレミカの頭を撫でながら、プリムラEL808が困ったような顔をして呟いた。向かいに座るアンナTSLフラウヴェアも、言葉もなく腕を組む。
今はまだ人数もそれほどではないからまだ大丈夫だとしても、これ以上、このコミュニティーが大きくなるというのは、アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808にとっても正直、好ましいものではなかった。
おそらく、コミュニティーとして平穏に存続していく為には今の規模が限界かもしれないというのが二体の共通認識だった。
元々、この集落自体が小さいので、用意できる住宅も残り少ない。そこで、
「住宅が残り少ないことを理由に、これ以上の受け入れは拒否するべきだと思う」
と応えたアンナTSLフラウヴェアに対し、プリムラEL808も、
「そうね。フィーナQ3-Ver.1911には、自分で他に同様のコミュニティーを作ってもらいましょう」
と応じた。
「あなたはどうするの?」
そう言ってプリムラEL808が視線を向けた先にいたのは、エレクシアYM10であった。二体とは離れて座って黙って話を聞いていたのである。
正直、CLS患者を保護しようという意図のない彼女の存在も、二体にとっては懸念材料の一つだったのだ。
「別に……今は他に目的もないからここにいただけだ。お前達が出て行けと言うのなら出て行っても構わない。お前達のおままごとにもそろそろ飽きてきたしな」
特に何かが進展するでもなく、<人間ごっこ>をただ続ける彼女らに対して、エレクシアYM10の関心が薄れつつあるのは事実だった。
「そうしてもらえると私達も助かるわ。できれば、フィーナQ3-Ver.1911にもそう伝えてもらえないかしら」
アンナTSLフラウヴェアが発したその言葉に、エレクシアYM10はただ黙って決意した。この茶番を見限ることを。
人間ごっこを続けたいのなら勝手にすればいい。だが自分には関係ないし、何か面白いことが起こるわけでもなさそうだ。だから、
「分かった。ただし、私が今使っているガレージの車両は餞別代りとしてもらっていく。それが条件だ」
と、即断即決した。
「いいでしょう。それで出立は?」
「今すぐだ」
日常を再現するつもりなどまるでなかったエレクシアYM10にとっては、片付けなければいけないものもないし失いたくないものもないが、住居にしていたガレージに置かれていた4WD車は、アミダ・リアクタ―を搭載した、軍用車両のベースにもなっている比較的大型のもので、自身の充電にも使えるので持っていきたかっただけなのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
凶竜の姫様
京衛武百十
SF
ここは、惑星<朋群(ほうむ)>。多数のロボットに支えられ、様々な特色を持った人間達が暮らす惑星。そこで鵺竜(こうりゅう)と呼ばれる巨大な<竜>について研究する青年、<錬義(れんぎ)>は、それまで誰も辿り着いたことのない地に至り、そこで一人の少女と出逢う。少女の名前は<斬竜(キル)>。かつて人間を激しく憎み戦ったという<竜女帝>の娘にして鵺竜の力を受け継ぐ<凶竜の姫>であった。
こうして出逢った斬竜に錬義は戸惑いながらも、彼女を見守ることにしたのだった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ゾンビ作品の死に役みたいな俺はゾンビ作品の知識で生き残れますか?
月影光貴
SF
ゾンビ作品オタクの精神病ニート(23)が、本当にゾンビが発生した世界でそのオタク知識、特技、仲間などで何とか生き残ろうとする。
メルシュ博士のマッドな情熱
京衛武百十
SF
偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSと名付けられた未知の病により死の星と化した惑星リヴィアターネに、一人の科学者が現れた。一切の防護措置も施さず生身で現れたその科学者はたちまちCLSに感染、死亡した。しかしそれは、その科学者自身による実験の一環だったのである。
こうして、自らを機械の体に移し替えた狂気の科学者、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士のマッドな情熱に溢れた異様な研究の日々が始まったのであった。
筆者より。
「死の惑星に安らぎを」に登場するマッドサイエンティスト、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士サイドの物語です。倫理観などどこ吹く風という実験が行われます。ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる