死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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陽娘KF300と雪麗

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アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808は思いがけない状況の変化に困惑し、ますます他のロボットとの交流を避けるようになっていった。自分達にとって守るべき人間はトーマス達であって、その存在を現認した訳でもない不顕性感染者の為に動こうという気にはなれなかったようだ。

そんな二体の前に、新たなメイトギアが現れた。陽娘ヤゥニャンKF300という、メイトギアとしては比較的安価な廉価型の機体だった。しかしこのおかっぱ頭で全体の作りが廉価版らしくチープな印象のある陽娘KF300も、同じように幼いCLS患者、雪麗シュエリーを連れていた。不顕性感染者についての調査に出ていたフィーナQ3-Ver.1911と遭遇、この集落の存在を教えられてやってきたということであった。

「よろしくお願いします」

にこやかに挨拶されてつい愛想笑いとして笑顔を返してしまったアンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808だったが、陽娘KF300の雪麗に対する認識が自分達のそれと同じだということが判明してからは、素直に仲間として受け入れ、住居として空き家の一つを手入れした。するとそれがきっかけになったかのように、次々と同じ考えを持つメイトギアが集まってきたのである。

マリオンTSi、ミーシャKW3、パメラF4、ダイアナLIU10、浅黄あさぎFFC7が仲間に加わり、その集落は完全に一つのコミュニティーとして機能し始めていた。

そこで保護されているCLS患者も、トーマス、リンナ、レミカ、雪麗、パメラ、サム、アルフレッドの六人となり、九体のメイトギアと六人の幼いCLS患者は、家族のように生活を始めたのだった。

一方、フィーナQ3-Ver.1911はと言えば、リンナとレミカの世話を任せっきりにして調査を続け、時折CLS患者を保護しては帰ってくるということを繰り返していた。サムとアルフレッドは、そうして彼女が連れ帰ってきた子供であった。

「彼女はいったい、何のつもりなのかしら…?」

自分ではリンナやレミカ、サム、アルフレッドの面倒すら見ず、調査と言って何日も帰ってこないフィーナQ3-Ver.1911に対して、パメラF4やダイアナLIU10は不満げにそんな会話を交わしていたりもした。ロボットだから情報交換すれば彼女が本当に調査に行ってるのは分かる。だが、自分が連れてきた子供の面倒も見ないというのが納得いかないようだった。

彼女達が元いた人間社会でもそうだったが、こうして頭数あたまかずが増えてくるといろんな考えの者も当然増え、意見の行き違いも表面化してくるのは世の常というものなのだろう。

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