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素材の味が活きている
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まあそれはそれとして、藍繪正真は、異世界もののフィクションで日本の料理などがもてはやされるのを斜に構えて見ていた。
『そんなわけねーだろwwwww』
ってな。
だが、今、こうして出されたメシは、
『とにかく食えて腹が膨れればそれでいい』
的な、およそ<料理>とさえ言い難いものだった。
『素材の味が活きている』
と言えば聞こえはいいが、この場合はむしろ、
『素材の味しかしない』
と言った方がいいだろうな。
ジャガイモらしきものと豆を、カボチャのような甘みのある野菜と一緒に煮ただけの煮物が、まるで盆のような大皿に山盛り出てきただけなのだ。
それを二人で取り分けて食べろということなのだが、藍繪正真はそれを、
『こういうのを<豚の餌>って言うんだろうな……』
と思わずにいられなかった。
にも拘わらず、正面に座ったデインは文句も言わずにそれをモリモリと食う。当然だ。デインにとってはこれが普通だからな。中身が私、クォ=ヨ=ムイだからとかいうのは関係ない。こいつの体がそういうものだと受け止めているのだ。
しかし藍繪正真の方は、ここに来て僅か一食目の食事で、既に日本の料理が恋しくなってしまう。
『くっそう…これなら確かに日本の料理が人気になるわけだ……これに比べたらコンビニ弁当の方がよっぽど美味いじゃねーか……』
四時間の徒歩の果てにようやくたどり着いた馬小屋同然の宿は、カビで真っ黒に変色した隙間だらけの木の板で仕切られただけの風呂場とも言えない小屋でぬるま湯を浴びるだけの上に豚の餌の如き食事で、ベッドも木の箱の上に薄っぺらい毛布のようなものが何枚か敷かれているだけという有様に、自分が現代日本でいかに恵まれた生活をしていたのか思い知らされていた。
『刑務所の方がまだ快適なんじゃねーのか?』
とも思う。
『日本の底辺の方がこれよりはマシな生活してるぜ……!』
それでも仕方ないのでとにかく腹だけは満たす。
すると、ちょうど食事を終えたところで、
「どうだいお客さん。食べ終わったかい。済んだんなら皿を下げたいんだけどね」
などと声を掛けながら妙な艶めかしさのある、年齢不詳でスレた感じの女が部屋のドアを開けて入ってきた。宿屋の女将、ライネだった。
「おう、今終わったところだ」
デインが応えると、ライネはニタっと粘りつくような笑みを浮かべつつ、
「もしお楽しみを希望なら女の子も呼べるけど、どうする?」
などと訊いてきた。完全に<そっち系のサービス>を勧めてきてるのだと分かる。
しかしデインは、
「あ~、悪ぃ、俺は今日はそういう気分じゃないんだわ」
と肩を竦めつつ首を振った。すると女将は今度は藍繪正真の方を見て、
「そっちのお兄さんはどうだい?」
やはり意味ありげな淫猥な笑み浮かべながら訊く。
が、藍繪正真にしてみれば、興味はないこともないもののこんなところで来るような女など、年齢も見た目もアレで、しかも病気なども持っていそうだというのが頭をよぎってしまい、
「いや、いい……」
と断ってしまったのだった。
『そんなわけねーだろwwwww』
ってな。
だが、今、こうして出されたメシは、
『とにかく食えて腹が膨れればそれでいい』
的な、およそ<料理>とさえ言い難いものだった。
『素材の味が活きている』
と言えば聞こえはいいが、この場合はむしろ、
『素材の味しかしない』
と言った方がいいだろうな。
ジャガイモらしきものと豆を、カボチャのような甘みのある野菜と一緒に煮ただけの煮物が、まるで盆のような大皿に山盛り出てきただけなのだ。
それを二人で取り分けて食べろということなのだが、藍繪正真はそれを、
『こういうのを<豚の餌>って言うんだろうな……』
と思わずにいられなかった。
にも拘わらず、正面に座ったデインは文句も言わずにそれをモリモリと食う。当然だ。デインにとってはこれが普通だからな。中身が私、クォ=ヨ=ムイだからとかいうのは関係ない。こいつの体がそういうものだと受け止めているのだ。
しかし藍繪正真の方は、ここに来て僅か一食目の食事で、既に日本の料理が恋しくなってしまう。
『くっそう…これなら確かに日本の料理が人気になるわけだ……これに比べたらコンビニ弁当の方がよっぽど美味いじゃねーか……』
四時間の徒歩の果てにようやくたどり着いた馬小屋同然の宿は、カビで真っ黒に変色した隙間だらけの木の板で仕切られただけの風呂場とも言えない小屋でぬるま湯を浴びるだけの上に豚の餌の如き食事で、ベッドも木の箱の上に薄っぺらい毛布のようなものが何枚か敷かれているだけという有様に、自分が現代日本でいかに恵まれた生活をしていたのか思い知らされていた。
『刑務所の方がまだ快適なんじゃねーのか?』
とも思う。
『日本の底辺の方がこれよりはマシな生活してるぜ……!』
それでも仕方ないのでとにかく腹だけは満たす。
すると、ちょうど食事を終えたところで、
「どうだいお客さん。食べ終わったかい。済んだんなら皿を下げたいんだけどね」
などと声を掛けながら妙な艶めかしさのある、年齢不詳でスレた感じの女が部屋のドアを開けて入ってきた。宿屋の女将、ライネだった。
「おう、今終わったところだ」
デインが応えると、ライネはニタっと粘りつくような笑みを浮かべつつ、
「もしお楽しみを希望なら女の子も呼べるけど、どうする?」
などと訊いてきた。完全に<そっち系のサービス>を勧めてきてるのだと分かる。
しかしデインは、
「あ~、悪ぃ、俺は今日はそういう気分じゃないんだわ」
と肩を竦めつつ首を振った。すると女将は今度は藍繪正真の方を見て、
「そっちのお兄さんはどうだい?」
やはり意味ありげな淫猥な笑み浮かべながら訊く。
が、藍繪正真にしてみれば、興味はないこともないもののこんなところで来るような女など、年齢も見た目もアレで、しかも病気なども持っていそうだというのが頭をよぎってしまい、
「いや、いい……」
と断ってしまったのだった。
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