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金貨百キロと羽毛百キロってどっちが重いか知ってる?

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シャフセンバルト卿の領地内の畑すべてで同じように堆肥を使って耕作を行うことになり、それぞれの町に支社を作る為の準備が着々と進んでた。面接で最終的に残った十八人を六つの町に振り分けて、それぞれに支社を作ってもらうことになる。

みんな、ぐいぐいと前に出てくるタイプじゃないけど言われたことはきちんと真面目にこなすタイプの人を選んだつもりなんだけど、さすがに私も面接官の真似事は初めてだったから、正直、不安もあった。

だけどその辺は、一緒に面接をしてくれたメロエリータが私の狙いをしっかりと理解してくれてた。

メロエリータは、その子供のような外見を活かして敢えて相手に見くびらせて本音を引き出すというのが実に巧かった。

しかも変装して貴族の令嬢って分からないようにして、ホントに子供のふりをして、でもいかにも生意気そうに、

「金貨百キロと羽毛百キロってどっちが重いか知ってる?」

なんていきなり問い掛けたりして、相手がいかにも馬鹿にしたように、

「はっ! そんなもん金貨に―――――」って言いかけてひっかけだと気付いて慌てて「どっちも百キロだから同じだ!」とか言い直しても駄目だった。相手を見くびって浅慮しかできない人間は要らないとばかりにリストにバツ印をつけていってた。

そうかと思うと、

「貴族がもっとじゃんじゃん堆肥を使って収穫を増やせって言ってきたらどうする?」

とか訊いて、「え…と」みたいに返答に詰まるのもバツ印をつけてた。この場合の模範解答は、『本社に指示を仰ぐ』だった。

私が、自分の勝手な判断で動くようなのは要らないって言ってるのをちゃんと理解してくれてたからこその質問だった。

貴族側との交渉はメロエリータの仕事だ。そのメロエリータを通さずに自分で決めようとするのは困る。たとえ貴族からの要求であったとしてもね。

シャフセンバルト卿の領地内ではたぶんそんなことはないと思う。そうやって茶々を入れてくるとしたらそれこそメロエリータが言われるんじゃないかな。卿にとっては娘だし。でも、今後、他の貴族の領地でも同じようにすることになれば、それぞれの貴族にとっての窓口は自分のところにできたカリン商会の支社ってことになるから、そっちに言ってくることも増える筈だ。

そういうことも想定して、メロエリータ以外にも貴族との窓口になってくれる人間を見付けないといけないだろうし、それぞれの地域の状況に合わせてやり方を変えないといけない場合が出てくるとしても、きちんと本社に話を通してもらわないとこっちとしても責任の負いようがないからね。

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