上 下
47 / 535

兵士の鍛錬として水汲みとかやってるけど、いかにも効率悪いからなあ

しおりを挟む
畑を耕す時は基本的に牛にすきを引かせるんだけど、面積がそれまでの倍になったから、当然、その分の牛も必要になった。でもいきなりそれだけの牛を確保できなかったことで、雪瓜の時と同じで、兵士達が何人もで犂を引くという、足腰の鍛錬を兼ねた方法をとった。

いや~、人間が犂を引いてるという光景はなかなかシュールのものがあったな。

兵士達も、畑仕事としてじゃなくあくまで<足腰の鍛錬>という形で命令されてるから大人しく従ってた。

「し…死ぬ……!」

「もう動けねえ……」

何て言いながらぐったりしてたのも多かった。だけどアウラクレアが優しく微笑みながら「お水どうぞ」とかすると、顔を赤らめて「は、はい!」だって。現金な奴らだな~。

でも、しばらくそうしてる間に慣れてきて、だんだんサマになってきたりしてるのが分かった。その光景を見ながらメロエリータが、

「ふっふっふ、これは壮観だな」

とほくそ笑んでた。そして彼女が目論んでた通り、小麦の作付が終わる頃にはバンクレンチの時と同じように兵士達も精悍な感じになってた気がする。

でもまだ仕事は終わらない。剣とかの鍛錬の合間にも畑に出て雑草を抜いたり水を撒いたり。しかしその際にやっぱり灌漑の必要性も感じた。兵士の鍛錬として水汲みとかやってるけど、いかにも効率悪いからなあ。

そこで私はメロエリータに灌漑をしてみたいと申し出た。

「ふむ。それは必要なことなのか?」

と問い掛ける彼女に、

「できればあった方が今後も役に立つと思う」

と答えさせてもらった。

「…よかろう。それも訓練になるやもしれん」

川から直接用水路を引く方法でもいいんだけど、あまり大きく川の流れを変えるようなことはしたくなかったから、前にも言ったようにせっかく揚水水車の技術があるんだし、それを利用することにした。

畑の近くに小さな溜池を作り、そこに水車で汲み上げた水を樋を使って導き入れる形だ。こうすればいちいち川にまで汲みに行く必要もなくなる。川のすぐ傍の畑には必要ないかもだけど、河原まで降りたり橋の上から汲み上げるののって意外と大変なんだよね。時間もロスするし。労働力を効率的に使いたいからさ。

正直、私には灌漑の知識は豊富とは言い難かった。だからやり方とかは間違ってるかもしれないけど、その辺りは実際にやってみて不具合があればそれを随時改善していくことにしよう。

水車は、エルトブンガのところでも作ってるってことだった。

「こりゃ忙しくなるな。本腰入れるのは家の方が一息ついた夏以降ってことになるが、それでもいいんなら引き受けるぜ」

「ああ、それでいい。お願いしたい」

ということで、灌漑に向けての準備も始まったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...