上 下
6 / 535

ここらで引きの強いキャラを投入する。でないと絵面が地味すぎる

しおりを挟む
「カリン、この荷物はこっちでいいの?」

と声を掛けてきたのは、ネローシェシカの娘で十八歳のアウラクレア。浅葱あさぎ色の瞳と髪を持つ可愛い子。とてもおっぱいが大きい。

『おっぱいが大きい』

大事なことなので二回言った。<胸囲の格差社会>とはまさにこのことかと、ゆさゆさ揺れる彼女のおっぱいが目につく度に思い知らされる。決して私だって小さい方じゃない。小さい方じゃないけどさ…!

でも、あの大きさで<美乳>ってどういうことよ!? 普通はあんなにでかけりゃ重力に負けて垂れるでしょうが!? なに!? これも魔法なの!? 魔法のおかげなの!? 応えて微生物せいれいちゃん!!

……なんて、人間の慟哭が微生物かれらに届くはずもなく、彼女のおっぱい目当てに事務所にたむろする男共に、

「さっさと仕事しろ! このボンクラ共が!! 契約切るぞ! ああ!?」

と、ついつい八つ当たりを。

でも、その後で自己嫌悪に陥るんだよな~。



この世界に来てから三年。顕微鏡代わりの魔法によって、私は様々な発見をすることになった。魔法が発動する瞬間に何が起こってるのかも目で見て理解した。

「これが精霊…!? あなた、大発見よ!!」

<顕微魔法>(私が勝手にそう命名した)で、微生物が魔法を発動させるところをネローシェシカに見てもらったら、彼女はそんな風に驚いただけでなく、とても喜んでくれた。私がこの世界で生きていけるようになったと太鼓判を押してくれた……

でも、そのネローシェシカはもういない……

なぜなら彼女は、一年前、隣の国がさらにその隣の国から侵略を受けた際に、この国への応援要請が来て、そうして編成された部隊に、魔法使いとして彼女も参加したから。

そして、彼女は帰ってこなかった……

戦争そのものは彼女達の勝利だった。侵略を仕掛けてきた国の兵士は長く続いた飢饉の影響でやせ細っていて士気も低く、必死ではあったけど力の差は歴然としてた。彼女が参加してた部隊でも戦死者はたったの三人で、そのうちの一人がネローシェシカだった。彼女は、敵の自爆攻撃から部隊を守る為に盾になって命を落とした……

その知らせを受けて私は泣いた。この世界に放り出された私を救ってくれた恩人を奪った戦争を恨んだ。

でも同時に、その戦争が起こる原因になった飢饉のことを知り、侵略を仕掛けてきた側も追い詰められて生きる為にやむなく戦争を仕掛けてきたのだと知った。

そして私は誓ったの。大学で動物の排泄物や有機廃棄物を効率的に堆肥に変える研究をしてた自分の経験を活かそうって。農地を改良して農作物の収穫量を増やして、生きる為に他国を侵略しなくちゃならなくなるようなのを少しでも減らそうって。

そして私は、ネローシェシカの娘のアウラクレアと、もう一人の仲間となるメロエリータと共に、今の会社を立ち上げたのだった。

しおりを挟む

処理中です...