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人間にとって大切なことって何? それはトイレよ!

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私はね、汚いトイレってのが許せないの。それが自分の家のトイレだったりしたらそれこそね。

そんな私が何の因果か、いかにも中世ヨーロッパ風の異世界に飛ばされたんだけど、正直、それに気付いた時には自殺も考えたわね。

何故って? 中世ヨーロッパのトイレ事情を知ってれば、私の気持ちも分かるってもんじゃないかしら。なんでその手の世界を舞台にした物語がどれもこれも異世界で、しかも魔法が発展してるのか、よ~く理解したわよ。

戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ。魔法のおかげでトイレが何とかなってるの。魔法がなければ、それこそ地球の中世ヨーロッパのトイレ事情と変わらないんじゃないかしら。

私が飛ばされたその世界では、魔法によってウンチやおしっこをただの土に変えて処理してたのよね。

まあそのおかげで、取り敢えず自殺は思いとどまれたって感じ。もしそうじゃなかったら、自殺はしなくても頭がおかしくなってたでしょうね。



私の名前は宿角花梨すくすみかりん。一応は普通って言われる範疇には入るかなって感じの国立大学に通う大学生だったんだけど、どうやらラボでの実験中の事故に巻き込まれたみたいで、気が付いたらこの世界にいたわけ。

で、ここは、それこそテンプレそのままの、魔法が発展したファンタジーな世界で、私もそういうのは知らない訳じゃなかったから、その点については早々に受け入れることができた。でも心配だったのはさっきも言ったけどトイレ事情。もしそれが中世ヨーロッパそのままだったりしたら、道の端にはウンチがうず高く積もり、油断してたら頭からウンチやおしっこを被るような世界だった訳だけど、これもさっき言ったとおり、魔法のおかげで何とかなってたのよね。

ただ、この世界の人達にはそれを活かそうという発想はなかったみたい。この辺りは同じなのかな。ウンチがそのままで放置されてないのはいいんだけど、でも結局、それをただの土に変えて捨ててただけだから。

私は、大学で微生物の研究をしてて、その中で動物の排泄物を効率的に肥料に変えるのに役立つ微生物っていうのを特に研究してたの。だから、それを活かして私はここで事業を始めてた。ウンチやおしっこを高性能な肥料に変えて、それで農地を改良して作物の収穫量を上げ、結果として食糧事情とかを改善して、領土拡大の為の戦争とかを回避するっていう事業をね。

最初は三人で始めたそれも、今じゃ国そのものの後ろ盾も得て快調そのもの。

これは、そんな私の立身出世の物語……かな?

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