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もっとも、そのことを知ったのは私が

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ガルフフラブラ王国が今後どうなっていくかは、私には分からない。ただただ多くの人が幸せに暮らせる国になっていってほしいと願うだけだ。

そのためにも、若い人達にしっかりとしたビジョンを持ってもらいたいと思う。

とは言え、先のことばかり見詰めてたら足下の石に躓いたりってこともあるからさ。そういう部分については、逆に頑固なくらいに足下を見る人も必要かなって思ってる。

ヘリーバンクレンのトカマクラさんみたいな人がさ。

でもまあ、ここガルフフラブラ王国でも、サイサスリスト氏みたいな人もいることだし、心配はしてないかな。

実際、サイサスリスト氏が管轄するサイサアルメド州では、堅実に収穫量が増えつつあるらしい。それも、急に爆発的に増えるんじゃなくて。

セリス商会の働きもあってね。

そう、<セリス商会>だ。

というのも、メロエリータは当然のこととしてセリス商会についても譲渡を迫ってきたんだけど、実は経営権は既にメロエリータに移ってるんだけど、名前だけ残してもらったんだよ。アルカセリスの名前でもあるからさ。

アリエ商会やタルハ商会についてはそれどころじゃなかったし、カリン商会については私の名前を冠したものだから別にいいんだけど、せめてこっちはね。

「分かった。経営そのものは統合するが、名前だけは残そう」

メロエリータも承諾してくれた。

それに、何となく予感めいたものがあったんだ。セリス商会についてはね。これは十年後の話になるんだけど、それまでの現場の仕事を後進に譲ったアルカセリスが、セリス商会の代表(実質的にはトゥルカ商会ガルフフラブラ支社の支社長だね)に就いたんだよ。セリス自身、自分の名前を冠した会社ってことでいつかはって想いがあったらしい。

だけど私の知り合いだからとかじゃなくて、きちんとゼネコン的な仕事をマネジメントする能力を認められてのことだったんだ。すごいよね。で、事実婚状態のルルクトゥリタは秘書という名の事実上の副支社長的な立場に就いて、二人でセリス商会を回していってるそうだ。

アルカセリスとルルクトゥリタは二人とも女性だから当然、子供はいない。だけどしっかりと後進の育成をして、後継者は育てていってるって。逆に子供がいなかったから変に子供に継がせようとしない点でよかったのかもしれない。

しかも、ティンクラウラもセリス商会に就職して、現場の指揮にあたってるってさ。

いろいろと進んでいってる。

それが嬉しい。

もっとも、そのことを知ったのは、私がファルトバウゼン王国に帰ってからのことだったけどさ。

そう。ファルトバウゼン王国に帰ることができるようになったんだ。

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