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御託より現実を見てもらうんだ

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いよいよトカマクラさんの畑の一部で、堆肥を使った栽培を試す段階に来た。

するとトカマクラさんは、躊躇うことなく堆肥に手を突っ込んで、その感触を確かめてた。粘りとか湿度とか、そういうものを確かめてるのかもしれない。それを確かめた上で、自分の畑にはどのくらい混ぜればいいのかを見極めようとしてるんだろうな。

「まずはトカマクラさんの思うようにやってみてください」

私の言葉に、彼は、

「ふん……俺を試そうってか? ならその挑発に乗ってやる。もし俺が失敗したら精々嗤うがいい」

憮然とした表情でそう言いながら堆肥を畑に撒き状態を逐一確かめながら漉き込んでいった。

その丁寧さに、私は胸が躍るのを覚えた。

これまでにも、とにかくたくさん使えばたくさん収穫が得られると考えて、私が指示した分量を大きく超えて堆肥を使おうとした人はいた。だけどそういうのは結局土のバランスを崩して思ったほどは増えなかったりするんだよね。

それでも元の状態よりは増えたりもするから効果があると考えてさらに増やそうとする人もいた。だけど、ある点を越えたら急にまた収穫量が減ることもあるのが農業の難しさだ。

人間の体と同じだよ。いくら健康にいいって言われてる食べ物とかでも食べ過ぎると逆に体調に悪影響が出たりする。なんにでも<頃合い>っていうものはあるんだ。それをわきまえないとダメなんだ。

だけどトカマクラさんは、一見したら本当に堆肥を混ぜてるのかどうか分からない程度を混ぜていく。

慎重に確かめながらというのもあるかもしれないけど、それ以上に彼には確信があるのかもしれない。

そして、ここでも栽培されてた雪瓜に非常に近い作物の種を植えていった。

同時に私も、畑の一部を借りて私なりのやり方で試させてもらうことにする。

彼の言った通り、御託より現実を見てもらうんだ。

ただ、私のやり方は、トカマクラさんのそれによく似ていた。つまり彼は、私があれこれ指示しなくても自分で適切な使い方を探り当てたんだ。

すごいよ。本当にすごい。

世界にはそういうすごい人がたくさんいる。なのに十把一絡げにされて排除されたり抑圧されたりしてる。それって人間社会からしたら大きな損失だよ。トカマクラさんにはこれからも立派な畑を作ってもらいたい。

本人が輸出とかには興味なくてあくまでこの街を支えるだけになってるけど、収穫が増えてくれば使い切れなくなって捨てることになるかもしれない。そうなってきたらやっぱり輸出するっていうのも選択肢に入るんじゃないかな。

そもそも他所に売ろうとしなかったのは、あくまでこの街に十分な食料を供給することが目的みたいだから、それを後回しにしてまでお金を儲けようとは思わなかっただけかもしれないね。

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