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こっちが用意したものをそのまま鵜呑みにするんじゃなくて
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役所の周囲が綺麗になると、その辺りに住んでいた住人達が興味を持ち始めた。
「これは何をやってるんです?」
私達が道路のウンチを堆肥化してるところに、初老の男性がそう声を掛けてきた。
「ウンチを魔法で土に変えてるんです。そうすれば臭いもしませんし汚くもないですから」
「ほお~っ! ホントにそんなことができるんですかい?」
その男性は、生まれてこの方、この街から出たことがなかったらしい。噂話では他の国でのウンチの処理について聞いたりもしてたみたいだけど、半信半疑だったそうだ。
無理もないか。この街の有様を普通として育ってきたんじゃね。
だけど目の前でウンチがみるみる変化し、実際に臭いもなくなったのを確認すると、
「ホントだ! 臭わねえ!」
声を上げて感心してた。
「街全部で同じようにするんですかい?」
明らかに興味を抱いてる感じで訊いてくる男性に、
「もちろんです。この街は生まれ変わりますよ…!」
と笑顔で応えた。
こうして、少しずつ、関心を向ける人達が出てきてくれたんだ。
でも、もちろんその一方では、
「そんなメンドクサイことやってられるか! 今までこうしてきたんだからそのままでいいだろ!」
みたいなことを言う人もいる。
だけどそういう人については、敢えてその場で説得しようとは思わない。こちらから一方的に押し付ける形で説得しようとすると逆に反発して意固地になることは分かってるからね。これまでも散々見たパターンだ。
だからそういう人達については好きにしててもらう。これまで通り道にウンチをぶちまけてても、注意しない。
これが浸透してくれば放っておいても気まずくなってやめる人が出てくるはずだから。
それよりも……
堆肥化を始めてから二週間後、私はまたリオドレクと一緒にトカマクラさんのところへと向かった。
するとトカマクラさんが、開口一番、
「お前が寄越した二十日大根、俺が知ってるのとは別物だな」
だって。
でもそれは、二十日大根に似た別の何かで自分を騙そうとしてるとかそういう意味じゃなかった。
そんなの、トカマクラさんなら見れば分かる。私が届けたのは確かに二十日大根で、土が違うから育ちも違うっていうのが分かるんだ。
彼は言う。
「お前の土を見せてもらった。確かにすごい。すごいが、俺の畑にはこのままじゃ使えねえな。粘りが強すぎる。土が強すぎるんだ。作物が負けちまう……」
二十日大根が植えられた樽の土を手に取り、トカマクラさんは言った。
そう…! そうなんだ。まさにそれなんだよ!
こっちが用意したものをそのまま鵜呑みにするんじゃなくて、それが自分の畑に合うかどうかをちゃんと考えることが大事なんだ。
トカマクラさんは、それができる人なんだ……!
「これは何をやってるんです?」
私達が道路のウンチを堆肥化してるところに、初老の男性がそう声を掛けてきた。
「ウンチを魔法で土に変えてるんです。そうすれば臭いもしませんし汚くもないですから」
「ほお~っ! ホントにそんなことができるんですかい?」
その男性は、生まれてこの方、この街から出たことがなかったらしい。噂話では他の国でのウンチの処理について聞いたりもしてたみたいだけど、半信半疑だったそうだ。
無理もないか。この街の有様を普通として育ってきたんじゃね。
だけど目の前でウンチがみるみる変化し、実際に臭いもなくなったのを確認すると、
「ホントだ! 臭わねえ!」
声を上げて感心してた。
「街全部で同じようにするんですかい?」
明らかに興味を抱いてる感じで訊いてくる男性に、
「もちろんです。この街は生まれ変わりますよ…!」
と笑顔で応えた。
こうして、少しずつ、関心を向ける人達が出てきてくれたんだ。
でも、もちろんその一方では、
「そんなメンドクサイことやってられるか! 今までこうしてきたんだからそのままでいいだろ!」
みたいなことを言う人もいる。
だけどそういう人については、敢えてその場で説得しようとは思わない。こちらから一方的に押し付ける形で説得しようとすると逆に反発して意固地になることは分かってるからね。これまでも散々見たパターンだ。
だからそういう人達については好きにしててもらう。これまで通り道にウンチをぶちまけてても、注意しない。
これが浸透してくれば放っておいても気まずくなってやめる人が出てくるはずだから。
それよりも……
堆肥化を始めてから二週間後、私はまたリオドレクと一緒にトカマクラさんのところへと向かった。
するとトカマクラさんが、開口一番、
「お前が寄越した二十日大根、俺が知ってるのとは別物だな」
だって。
でもそれは、二十日大根に似た別の何かで自分を騙そうとしてるとかそういう意味じゃなかった。
そんなの、トカマクラさんなら見れば分かる。私が届けたのは確かに二十日大根で、土が違うから育ちも違うっていうのが分かるんだ。
彼は言う。
「お前の土を見せてもらった。確かにすごい。すごいが、俺の畑にはこのままじゃ使えねえな。粘りが強すぎる。土が強すぎるんだ。作物が負けちまう……」
二十日大根が植えられた樽の土を手に取り、トカマクラさんは言った。
そう…! そうなんだ。まさにそれなんだよ!
こっちが用意したものをそのまま鵜呑みにするんじゃなくて、それが自分の畑に合うかどうかをちゃんと考えることが大事なんだ。
トカマクラさんは、それができる人なんだ……!
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