何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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お前の嫁にしちゃトウが立ちすぎてる気がするが……?

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「取り敢えずはまず、この街で畑をやってる人を紹介してくれると助かるかな」

私はリオドレクにそう告げた。

「ああ、それならトカマクラがいいだろ。この街で一番大きな畑を持ってる奴だ。気難しいジジイだが、作物はいいのを作る。他所にも売れりゃ儲かるってのに、本人は商売っ気がなくてな」

苦笑いを浮かべながら彼は言う。

「いいね。私は魔法使いで商人でもあるけど、本職は農業なんだ。そういう人は好きだよ」

という訳で、私は早速、リオドレクの案内でトカマクラという人のところに向かった。

そこは、街外れに広がる畑だった。時期的にもう収穫も終わってたけど、奥に広がる砂漠とはくっきり分かれたしっかり手入れされた畑だ。それを見るだけで管理してる人の生真面目さ誠実さが分かる。

それを見ながら歩いた先に、トカマクラの家はあった。割と大きな、先祖代々この畑を守ってきたんだなあって感じる家だった

で、そこにいたのは、

「ドレクか……何の用だ? お前に売るようなものはないぞ……!」

ギロリと睨み付けながらいきなりそんなことを口にする、すっごい怖そうなオジサン、いや、オジイサンだった。

まさに絵に描いたような<頑固ジジイ>だね。

「相変わらずだな、ジジイ。けどな、いくら意地張ったってお前が死にゃここは俺のもんだ。お前が死んだらしっかり儲けさせてもらうよ」

そのやり取りで察してしまった。この二人、親子なのか。

農業一筋で融通の利かない父親に反発して商売の道に進んだ息子ってことなんだね。

そんなやり取りの後、トカマクラさんは私とブルクバンクレンさんの方をぎろりと睨んで、

「なんだこいつらは? 女の方は……お前の嫁にしちゃトウが立ちすぎてる気がするが……?」

ってほっとけ! 誰が<嫁>か! 私はれっきとした人妻だ!

とは口にせず、

「初めまして。私はカリン・スクスミ。あちこちの国で農業指導をしている者です」

リオドレクに対するのとは違って丁寧に挨拶させてもらった。すると、トカマクラさんは目を細めて鋭く私を見た。

「カリン……? そうかお前が……」

え? 私の名前を知ってる?

「お前のことは町長から聞いてる。何でも魔法で作物の収穫を増やす山師だそうだな。帰れ。俺はお前みたいな奴の口車には乗らん……!」

だって。

わはは! こりゃあなかなか手強そうだ。商人も知らない私の名前を知ってて、しかも私が何をしてるかもある程度知ってて、その上で<山師>呼ばわりか。

自分のやり方に相当な自負を持ってるんだな。

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