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ある種の慣れがあると言いますか

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「私は、ヘリーバンクレンに対する焼滅作戦がどのような形で行われるのかということを探る為に、間諜として潜入することを志願しました。そして三ヶ月の間、こちらで様々な情報を探ってきたのです。ですが、さすがに私も最初はここの有様に驚かされました。一応、以前から話には聞いていたのですが、まさかこれほどまでとは思いませんでした」

目的の商人のいる場所までの案内も買って出てくれたブルクバンクレンさんと一緒に歩きつつ<堆肥化魔法>で進行方向のウンチを堆肥化してる私に、彼はいろいろと教えてくれた。

ちなみに、私は歩道の内側、彼は車道側を歩く。と言うのも、歩道の内側は建物の庇があるからウンチの直撃を受ける可能性があまりなく、車道側はそれがあるので、女性には歩道の内側を歩いてもらうというのが紳士の嗜みなんだって。

これは地球でもそうだったらしく、男性は車道側、女性は歩道の内側を歩いてもらうのが紳士の嗜みというのはその名残らしい。

まあ私はそんな風に気遣ってもらわなくてもそんなに気にしないけど、気遣ってもらえたら悪い気は確かにしないよね。

それにそのおかげで堆肥化魔法に集中できるし。

通りがかる人達は私が何かをしてるっていうんで訝し気に見ながら通り過ぎるけど、だからって何か話しかけてきたリもしない。この国の人達は、さっき怒鳴ってたりした人もいたけど、基本的にはシャイな人達みたいだね。

あと、気になったのが、

「ここの人達は、自分達が抹殺されそうになってるのを知ってるの?」

ということだった。それに対してブルクバンクレンさんは、

「一応、察してはいるようですね。自分達が他の国から疎まれていることを……ただ、それ自体、かれこれもう何百年も昔からの話で、ある種の慣れがあると言いますか、諦めているような部分のあるようです……どうせいつかはこの世から消される運命なんだと……」

「そうなんだ……」

その話を聞いて、私は何だか切なくなった。

この街を作った人達はブルクバンクレンさんと同じ祖先を持つ人達で、周囲の国々から迫害を受けて滅ぼされた国の人達だったらしい。

彼らは、奴隷になるかさもなくば殺されるかっていう境遇で、辛うじて逃げ延びた人達でこの街は作られたけど、それからも何度も奴隷狩りとかを受けてきたらしい。

街をウンチ塗れにしたのは、実は奴隷狩りから自分達を守る為という意味もあったのかもしれない。事実、街がこんな有様になってからは奴隷狩りも減ったそうだし。

だから、もし、街が綺麗になったとしても、そうなると今度は奴隷狩りを受けるという危険性もあるかもしれない。

そうは言っても、今のままじゃどのみち焼滅させられるんだ。

まずは生き延びることを考えなくちゃね。

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