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そんなところでも人間は生きている。生活を営み、人生を送ってる
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「マジか……これ……」
ヘリーバンクレンへの道程は順調そのもので、包囲している連合軍の陣中見舞いもして、それから私は街に入った。
って言うか、街に入る前から、私にとっては嗅ぎ慣れた臭いを感じ取って、いや~な予感はしてたんだよね。
排泄物が積もり積もって発酵した臭いだ。
だから、馬車はヘリーバンクレンの街には入らずに引き返し、私は二キロほど歩いて街へと入った。
その私の目の前に広がっていた光景。
ああ、これが、<リアルな中世ヨーロッパの街の姿>だな……
そう。あらゆるところにウンチやゴミや汚物がうず高く積もり、目に沁みるほどの悪臭を放っている、リアルな中世ヨーロッパの街の姿そのものの光景。
ヘリーバンクレンの街の住人のほとんどは、遺伝的に魔法に対する適性を持たない人達で、だから他の国や地域では当たり前に行われている、
『ウンチを魔法によって土に変える』
という手段が取られていないんだ。そして、古代ローマのような上下水道の技術もなく、ガルフフラブラ王国のような徹底した一括処理も定着せず、結果として<ウンチの街>と化した。
だけど、そんなところでも人間は生きている。生活を営み、人生を送ってる。地球の中世ヨーロッパがウンチ塗れで一千年過ごしたようにね。
しかし、何と言うか、このタイミングで私がここに来ることになったというのは、本当に運命ってものを感じてしまうな。
ファルトバウゼン王国でこの世界に慣れて、ムッフクボルド共和国で命のやり取りを目にして、ガルフフラブラ王国のウンチの処分場でウンチの山さえ見慣れてしまって、それからだもんな。
もし私がこの世界に来て最初にここを目にしてたら、これまでの<活躍>はなかっただろうなあ……
それどころか、早々に自分で死を選んでたかもしれない。
この世界に来てここの文明レベルが精々中世ヨーロッパ並みと知った時にまず想像して、
『無理無理無理無理! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!』
とか考えてたくらいだもんな。
でも今は、もう、そこまでじゃない。
慣れって怖いね。
まあでも、やってやるさ。この街を根こそぎ変えてやる。たった数千人が暮らす程度の規模の街だ。このくらいなら何とかなるよ。
そういう訳で、トラカレテルス王国に商売目的で勝手に入国してヘリーバンクレン病を発生させて死刑になった商人の、仲間の下へと向かった。
死刑にする前に拷問でいろいろ聞き出したそうだ。それについても私は門外漢だからとやかく言わない。
念の為に雷撃の魔法はいつでも使えるようにしながら、私は聞いていた場所へと足を向けたのだった。
ヘリーバンクレンへの道程は順調そのもので、包囲している連合軍の陣中見舞いもして、それから私は街に入った。
って言うか、街に入る前から、私にとっては嗅ぎ慣れた臭いを感じ取って、いや~な予感はしてたんだよね。
排泄物が積もり積もって発酵した臭いだ。
だから、馬車はヘリーバンクレンの街には入らずに引き返し、私は二キロほど歩いて街へと入った。
その私の目の前に広がっていた光景。
ああ、これが、<リアルな中世ヨーロッパの街の姿>だな……
そう。あらゆるところにウンチやゴミや汚物がうず高く積もり、目に沁みるほどの悪臭を放っている、リアルな中世ヨーロッパの街の姿そのものの光景。
ヘリーバンクレンの街の住人のほとんどは、遺伝的に魔法に対する適性を持たない人達で、だから他の国や地域では当たり前に行われている、
『ウンチを魔法によって土に変える』
という手段が取られていないんだ。そして、古代ローマのような上下水道の技術もなく、ガルフフラブラ王国のような徹底した一括処理も定着せず、結果として<ウンチの街>と化した。
だけど、そんなところでも人間は生きている。生活を営み、人生を送ってる。地球の中世ヨーロッパがウンチ塗れで一千年過ごしたようにね。
しかし、何と言うか、このタイミングで私がここに来ることになったというのは、本当に運命ってものを感じてしまうな。
ファルトバウゼン王国でこの世界に慣れて、ムッフクボルド共和国で命のやり取りを目にして、ガルフフラブラ王国のウンチの処分場でウンチの山さえ見慣れてしまって、それからだもんな。
もし私がこの世界に来て最初にここを目にしてたら、これまでの<活躍>はなかっただろうなあ……
それどころか、早々に自分で死を選んでたかもしれない。
この世界に来てここの文明レベルが精々中世ヨーロッパ並みと知った時にまず想像して、
『無理無理無理無理! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!』
とか考えてたくらいだもんな。
でも今は、もう、そこまでじゃない。
慣れって怖いね。
まあでも、やってやるさ。この街を根こそぎ変えてやる。たった数千人が暮らす程度の規模の街だ。このくらいなら何とかなるよ。
そういう訳で、トラカレテルス王国に商売目的で勝手に入国してヘリーバンクレン病を発生させて死刑になった商人の、仲間の下へと向かった。
死刑にする前に拷問でいろいろ聞き出したそうだ。それについても私は門外漢だからとやかく言わない。
念の為に雷撃の魔法はいつでも使えるようにしながら、私は聞いていた場所へと足を向けたのだった。
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