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どんな魔法使いよりも強力だったな

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大臣の命令で私のことを値踏みに来たらしい役人は、何となく態度が柔らかくなった感じで帰っていった。

目の前で起こったことをそういう風に好意的に受け取れる人なら、たぶん大丈夫だ。そもそも向こうにしたって、どこか胡散臭い外国人の魔法使いだっていうんで警戒してただけだろうしさ。

でも、物事を客観的に見られる人だったら正当に評価できるでしょ。

物語的には分からず屋で頭の固い大臣とその手下達って形にした方が盛り上がるかもしれないくても、自分を引き立たせるために他人を悪者扱いにするっていうのは私は好きじゃないんだ。以前にも言ったと思うけどさ。

世の中ってそんな分からず屋の人ばかりじゃないんだよ。もちろん、ホントに分からず屋な人もいたりするけど、そういう人とは真っ向からぶつかっても無駄に手間が掛かるだけだよ。そんな時は、別ルートを使うんだ。

どんなに分からず屋に思える人だって、必ず一人や二人、『この人の話には耳を傾ける』っていう相手がいる。そういう伝手を辿って話を持っていくんだ。

そういう部分でも、メロエリータは天才的だった。途方もない人脈を辿ってどんな相手とも交渉の席を設けてみせた。彼女のそういう部分は、どんな魔法使いよりも強力だったな。

私も、彼女ほどじゃないけどここまでそれなりに顔を広げてきたんだ。

その一つが、サイサスリスト氏だった。彼は貴族や王族と対等に渡り合うために、ただぶつかるだけじゃなくて、貴族どころか王族の中にまで知己を持ってた。彼が国に対して従順に振る舞わなくてもやってこれたのは、そのおかげなんだよね。

で、今回、私がヘリーバンクレンの件で動いてるってことを知った彼が、自分のルートを通じて大臣に働きかけてくれたみたい。役人を視察に寄越したのだって、むしろ、

『自分の側からも確認する必要がある』

と大臣が思ってくれたからみたいだね。じゃなきゃまったくスルーのガン無視だっただろうな。

私の人生においては私が主人公だけど、それぞれが自分の人生の主人公だ。その中でしっかりと活躍してる人はちゃんといる。ただただ人任せにして流されるだけでひたすら文句言ってるだけの人ばかりじゃない。

私なんかよりもよっぽど高い能力を持った優秀な人達がそれぞれ動いてこの世は成り立ってるんだ。

だから私はそういう人達の力を借りて自分の目的を果たす。そのためにも、自分の役目を誠実にこなして信頼を積み重ねる。いい加減な仕事をしてる人に力を貸してくれる酔狂は人はそんなにいない。

真面目に働くっていうのはね、そういうことでもあるんだよ。

キリンにも、それを学んでもらいたいな。

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