何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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下手に触るとお母さんまで呪われてしまいます

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一つ目のタライで赤ん坊を洗ってる時、母親が手伝おうとして手を出してきた。

「任せてください。今、下手に触るとお母さんまで呪われてしまいます」

笑顔で私が言うと、彼女はハッとなって手を引っ込める。ロタウイルスはものすごく感染力が高いからね。たぶん、母親には既に免疫があって本人は重症化しないだろうけど、ウイルスを保持してそれをまた他にうつす可能性があるから、今後気を付けてもらわないといけないし。敢えてそういう言い方をする。

まずは背中も足もウンチ塗れになってたのを洗い流して、赤ん坊をタライの上に掲げ、それから講習に来てた魔法使いに手伝ってもらって二つ目のタライのお湯を赤ん坊に掛けてすすぐ。

綺麗になったら清潔な布で拭いて、新しいおくるみに包んでベッドに寝かせた。それから<抗ウイルス魔法>をかけて、赤ん坊の体に残ったウイルスと体内のウイルスを弱らせていく。

それと同時に講習を受けていた魔法使い達も、タライのお湯にウンチと一緒に入ったウイルスや、洗った時に周囲に飛び跳ねたお湯と一緒に飛び散ったウイルスも、教えた<抗ウイルス魔法>で処理してもらう。でないと感染が広がるから。

「感じるでしょ? 悪い精霊の気配を。それが十分に弱くなるまで丁寧にやって」

「はい……!」

私達魔法使いは、細菌やウイルスの存在そのものを感じ取ることができるからすごく助かる。地球ではどんな名医であっても細菌やウイルスがいるかどうかは検査とかを使わないと分からないけど、私達はそれこそ目で見るみたいにそれが分かるんだ。

そういう意味では、疫学的な分野での発展はもしかすると地球を上回るかもね。地球で起こったペストやスペイン風邪、エボラ出血熱の災禍みたいなのは、もしかしたら被害を最小限に抑えられるかも。

ヘリーバンクレンの一件は、そういう部分においての試金石になるかもしれない。

これは、それに向けての準備でもある。経験を積むことで私自身の魔法の腕を磨くという形でね。

なんにせよ、ロタウイルス(厳密には別のウイルスなんだけど、症状がすごくよく似てるから便宜上そう呼んでる)に感染した赤ん坊については、三十分ほどで処置が済んだ。

さらにその場にいた人間全員にロタウイルスが付着していたりしないか見ると、赤ん坊の母親はまあ当然として、私や魔法使い達、タライや重湯を用意してくれた係員にまで付いてるのが分かったから、それも処理する。赤ん坊を洗った時に撥ねた目に見えないほど小さな飛沫にまでウイルスが入ってたんだ。

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