上 下
481 / 535

<形>に拘ってしまったりするのって

しおりを挟む
私は敢えて、

『ヘリーバンクレンを救う』

という形にはしなかった。そういう話にすると、まるで同盟国側が悪者であるみたいに捉えられて反発を招く可能性があったからね。

やっぱ、そういう<形>に拘ってしまったりするのって人間の心理としてあるじゃん。国家としては体裁とか体面とかも大事だろうしさ。

地球でもあったよね。

『こうすれば上手くいく筈なんだけど、体裁とか面子とかがあって動くに動けない』

とかさ。なら、こっちとしても体裁とかよりも実利を取るよ。

『ヘリーバンクレンが救われる』

っていう実利をさ。

で、大使の口添えでまずはガルフフラブラ王国とファルトバウゼン王国との定例の会議に参加させてもらった。

いきなり全体会合の顔を出したりしたら、

『なんだお前は?』

って言われるのがオチだし。

そしたら、会議を行う王宮の部屋に大使と一緒に赴いた私の顔を一目見たガルフフラブラ王国側の担当の大臣が、

「こちらは、どなたですかな?」

だって。

まあね、確かに私、ここに来てからすぐに役所の方に行かされて、それから王宮へは区切り毎に進捗状況を担当の貴族を通して報告しに来るだけだから知らない人もいて当然なのかもしれないけど、

『仮にも自分達が呼び寄せてVIP待遇で仕事させてる人間の顔くらい知っておこうよ!?』

とは思ってしまったな。分かっちゃいたけどこの国の丸投げ体質は筋金入りだよ、ホント。

ただし、行政については役人に丸投げだったけど、軍事面についてはさすがにガチだった。

「あなたが我が国に多大なる貢献をしてくださっているのは分かりました。ですが、あなたは軍事については素人だと聞きます。そのあなたが何故このような席に?」

思いっ切り訝し気に私を睨みながら、大臣はそんな風に訊いてきた。まあ当然か。大臣の言う通り、私は軍事に関してはそれこそズブの素人だ。余計な口出しができるような立場じゃない。

「いえ、彼女は―――――」

大使が事情を説明しようとしてくれたけど、

「いえ、私の方から説明させてください」

と申し出させてもらった。私もいろいろ経験積んできたからか、度胸だけは付いたよ。その場で立ち上がり、大臣に一礼、それから恭しく話を切り出させてもらう。

「この度は突然押しかけてしまい、申し訳ございません。大臣のおっしゃるとおり、私は軍事に関しては素人にございます。しかしながら、此度のヘリーバンクレンの件につきましては、かの地に蔓延る疫病が事の発端と聞き及んでおります。疫病なれば、私ども魔法使いの領分でありますゆえ、何かお力になれればと思い、こうして馳せ参じた次第です」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...