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条件があります
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『私は、今度こそ同胞を救いたい……』
ブルクバンクレンさんのその言葉は、噛み締めるようにゆっくりと発せられた。そこに込められた彼の気持ちが伝わってくる気がした。
ちらりとベントを見ると、彼は黙って頷いた。
『あなたに任せます』
っていう意味だと彼の目が言ってた。
キリンは口を真一文字に結んで私を見詰めてる。私が何をどう決めるのか、彼女も見てるんだ。
そして私はブルクバンクレンさんに向き直り、言った。
「分かりました。そのお仕事について、お引き受けしてお構いません」
その私の言葉に、ブルクバンクレンさんの顔が微かにぱあっと明るくなるのが分かった。この人もこんな表情するんだなって感じた。
でも……
「ただし…!」
『ただし』と言った瞬間、ブルクバンクレンさんの顔がまた厳しくなる。それを確かめながら私は続けた。
「条件があります」
「……条件…?」
「はい。私が、今、抱えてる仕事が一段落つくまで。そうですね。あと半年、待っていただけますか。それが条件です」
「半年……」
そう呟きながら表情が曇るのが分かる。だけど私も、今の仕事を放り出していくことはできない。それでもあと半年あれば大体の道筋は立てられる算段はついてる。
半年なんて、現代日本の感覚じゃとんでもない期間にも思えるかもしれないけど、隣の国に行くにも何日もかかって、手紙の往復だけでも一ヶ月くらいかかるのが当たり前のここでは、実はそんなにとんでもない話でもないんだよね。
なにしろ、ヘリーバンクレンの街を住人ごと焼き払おうという話が出てからすでに一年が経ってるそうなのに、具体的な話がまだ全く決まってないくらいなんだから。
たぶん、今すぐにどの国が主導的な立場でそれをすることになるか決まったとしても、そこからまたどの国がどれだけの兵を出すかということも決めなきゃいけないし、軍の編成も決めなきゃいけないし、そこからさらに諸々決めてってなると、たぶん、余裕で半年以上はかかると思うんだよね。
だから間に合う可能性は十分にある。だけど、
「もしそれで間に合わなかった場合は、諦めてください。あなたの気持ちも考えたいけれど、私だって今の仕事を放り出す訳にはいかないんです」
と、きっぱりと言わせてもらう。
本音を言えば何千人もの人が犠牲になるのを黙って見ていたくない。けど……
しばらく目を瞑って何かを思案していた、いや、たぶん、自分自身に色々言い聞かせようとしてたであろうブルクバンクレンさんは、
「ふう……」
と溜め息を一つ吐いた後、おもむろに顔を上げて私を見て、
「分かりました。それで構いませんので、お願いできますでしょうか…?」
絞り出すように言ったのだった。
ブルクバンクレンさんのその言葉は、噛み締めるようにゆっくりと発せられた。そこに込められた彼の気持ちが伝わってくる気がした。
ちらりとベントを見ると、彼は黙って頷いた。
『あなたに任せます』
っていう意味だと彼の目が言ってた。
キリンは口を真一文字に結んで私を見詰めてる。私が何をどう決めるのか、彼女も見てるんだ。
そして私はブルクバンクレンさんに向き直り、言った。
「分かりました。そのお仕事について、お引き受けしてお構いません」
その私の言葉に、ブルクバンクレンさんの顔が微かにぱあっと明るくなるのが分かった。この人もこんな表情するんだなって感じた。
でも……
「ただし…!」
『ただし』と言った瞬間、ブルクバンクレンさんの顔がまた厳しくなる。それを確かめながら私は続けた。
「条件があります」
「……条件…?」
「はい。私が、今、抱えてる仕事が一段落つくまで。そうですね。あと半年、待っていただけますか。それが条件です」
「半年……」
そう呟きながら表情が曇るのが分かる。だけど私も、今の仕事を放り出していくことはできない。それでもあと半年あれば大体の道筋は立てられる算段はついてる。
半年なんて、現代日本の感覚じゃとんでもない期間にも思えるかもしれないけど、隣の国に行くにも何日もかかって、手紙の往復だけでも一ヶ月くらいかかるのが当たり前のここでは、実はそんなにとんでもない話でもないんだよね。
なにしろ、ヘリーバンクレンの街を住人ごと焼き払おうという話が出てからすでに一年が経ってるそうなのに、具体的な話がまだ全く決まってないくらいなんだから。
たぶん、今すぐにどの国が主導的な立場でそれをすることになるか決まったとしても、そこからまたどの国がどれだけの兵を出すかということも決めなきゃいけないし、軍の編成も決めなきゃいけないし、そこからさらに諸々決めてってなると、たぶん、余裕で半年以上はかかると思うんだよね。
だから間に合う可能性は十分にある。だけど、
「もしそれで間に合わなかった場合は、諦めてください。あなたの気持ちも考えたいけれど、私だって今の仕事を放り出す訳にはいかないんです」
と、きっぱりと言わせてもらう。
本音を言えば何千人もの人が犠牲になるのを黙って見ていたくない。けど……
しばらく目を瞑って何かを思案していた、いや、たぶん、自分自身に色々言い聞かせようとしてたであろうブルクバンクレンさんは、
「ふう……」
と溜め息を一つ吐いた後、おもむろに顔を上げて私を見て、
「分かりました。それで構いませんので、お願いできますでしょうか…?」
絞り出すように言ったのだった。
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