何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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単刀直入にお聴きします

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その日はただお茶を飲んで世間話をしただけで帰ったブルクバンクレンさんだけど、近くに宿を借りてるということで、次の休みの日にも顔を出してきた。

でも今回はベントもいたから、兵士の立ち合いは遠慮してもらった。部屋の外での待機だけでね。

だけど今回も、ただ世間話をしただけだった。

そして三回目の休日。ベントもいるし、兵士には、いつでも駆けつけられるようにはしつつも玄関外で待機してもらった。

これでようやく<話>ができる。本当の話をね。キリンはベントに抱いてもらって、少し離れたところに座ってもらった。

キリンはまだ、ブルクバンクレンさんに対して緊張してる様子が見える。やたら騒いだりとかぐずったりとかじゃないけど、気を許してないのは分かるんだ。そんな中で、

「よく入国できましたね」

私が言うと、

「あなたがムッフクボルド共和国に入国できたんですから、私にも同じことはできますよ」

ニヤリと笑いつつ彼は応えた。

その様子で私は察してしまった。だから訊いたんだ。

「あなたがわざわざ単なる物見遊山で敵国に潜入するような人じゃないことは私も分かってるつもりです。単刀直入にお聴きします。私に何の御用ですか…?」

回りくどい話は好きじゃない。こういうのはスパッと終わらせたい。

するとブルクバンクレンさんは、「くくく」と拳で口を押えながら嬉しそうに笑った。しばらくそうした後、

「いや、失礼。ゴホッ」

と一つ咳払いをして姿勢を正し、

「カリン殿が相変わらずなようで安心しました」

って微笑んだ。それはさっきまでの笑顔とは違ってた気がした。

なんか本当に、久しぶりに顔を合わせた姪っ子の成長ぶりに驚きつつも変わってない部分も見付けて嬉しそうにしてる叔父さんって感じかな。

だけど本当にそれだけの為に来たわけじゃないよね。私がそれを承知してるのを彼も分かってる。だから、

「実はあなたに、仕事を頼みたいと思い、こうして参上させていただいたのです」

と、真面目な顔になって切り出した。

「……伺いましょう」

私も即応じる。

前置きはない。ただ要点だけを彼は口にした。

「おそらく噂くらいは耳にしておられると思うのですが、ここガルフフラブラ王国の東に広がる荒野の中にあるヘリーバンクレンという街が危機に曝されているのです。私は、これを救いたい」

「!」

その言葉に、私は自分の中で何となく引っかかってたものが繋がるのを感じた。

<ヘリーバンクレン>、そうか。ブルクバンクレンさんに何か所縁のある街ということか。

それを裏付けるように彼は言ったんだ。

「ヘリーバンクレンは、私と祖を同じくする人々が作った街なんです。私は、今度こそ同胞を救いたい……」

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