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いわゆる<魔の二歳>っていうのが始まるらしいけど

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やってもみないで『無理だ』と言うのは私も甘えだと思う。

思うけど、現状、ウンチの堆肥化事業に加えセリス商会のフォローもしなきゃならない私には、そっちに出向いている時間がなかった。物理的に。

なにしろ、その<ヘリ―バンクレン>という街に行くには高速馬車をチャーターしても三日はかかるっていう距離だったから。

奴隷達に堆肥化の魔法を教えるなんて仕事を引き受けるのは現に私しかいない。

その私が、往復となると一週間くらいはかかる街に出向いてっていうのを両立させるなんて可能だと思う?

私は別に現実には不可能なことを掲げる<夢想家>じゃないからね。

だからこの時点では、祈るしかできなかった。

何とか最悪の事態だけは避けられてほしいって。

そんな私の願いが届いたわけでもないんだろうけど、その件は、同盟国同士でも折り合いがつかずにただ時間だけが過ぎていったみたいだ。どの国が主導するかみたいなことで揉めてるらしい。

そりゃそうだ。別に戦争を仕掛けてきたわけでもない数千人の人達を一方的に虐殺することの旗振り役を積極的にしたいなんて国はそうそうないだろうし。

そうしてる間にもキリンは順調に育ってくれて、二回目の誕生日を迎えてた。

この頃には、いわゆる<魔の二歳>っていうのが始まるらしいけど、キリンは確かに我が強いんだけど、周囲がちゃんと彼女の言葉に耳を傾けてると、案外、『イヤイヤ!』ってやらなかった。

本人がやってみたいということはまずやらせてみて、それが上手くいかないとなると、

『なんで?』

っていう顔でこっちを見るんだ。その時にすかさず手を差し伸べ、

「よし、じゃあ一緒にやってみようか」

と、あくまで本人がやることをただ手伝うって感じで力を貸すと、素直に手伝わせてくれた。

食事も、自分で食べたいっていう時には基本的には任せてた。もちろん上手にできないからヒドイことになったりもするけど、床にもテーブルにもシーツを敷いて、汚れても構わない服装で、暑い頃にはそれこそ裸で、顔も体もぐっちゃぐちゃに汚れてても怒らずに、そのままお風呂に入ってお風呂で遊びながらすっきりして、その間に手が空いてる人が汚れたシーツを片付けてってしてたら、そんなにダダをこねられたりしなかったな。

ちなみにお風呂に入れるのは、ベントが一番上手だった。というのも、もっと小さかった頃にもベントがお風呂に入れるとあんまり騒がないのに、私が入れると嫌がってぐずってたりしてたんだ。

どうやら、手の大きさが違ってて彼に抱かれてる方が安定してて安心するらしい。だからキリンをお風呂に入れるのは、自然とベントの役目になっていった。

その一方で、ご飯を食べさせてあげる時は私がいいらしい。彼女が自分からあーんと口を開けるタイミングにスッと匙を出すのが私が一番上手いようだ。

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