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こういう流れになるだろうなっていうのは元々分かってたし

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二年後、単身赴任することになる私だけど、でもその前に、ここですることはまだたくさんあるんだよね。

その一つが、ウンチの最終処分場での堆肥化だ。

サイサアルメド州での試験的なそれが評判を呼んで、あんなに渋ってた主都の担当役人達までが手の平を返してきたんだ。しかも主都だけじゃなくて、他の州でもね。

調子のいい態度には、正直、思うところがなかったと言ったら嘘になるけど、うん、でもいいよ、結果が良ければさ。

こういう流れになるだろうなっていうのは元々分かってたし。

役人ってこういうところあるよねって感じでさ。

だけど、役人って立場上、実績のないものには慎重になるしかないけど、逆に実績があるとなれば国益のために積極的にならないとっていうのがあるのも、今なら分かるんだ。

そんな訳で、堆肥化のシステム作りを一気に進めた。私自身、サイサアルメド州での経験があったことで、スムーズに進めることができた。

処分場にキリンを連れていくのはさすがに不安があったから彼女のことはベントに任せてたけどね。

セリス商会については順調で、ベントはキリンを連れて出社しても余裕で仕事ができてたみたい。現場を受け持ってくれる人達がどんどん育ってくれてたから、彼は指揮するだけでよかったそうだし。

だけどそれでも、社員はちゃんとやってくれてても、魔法使いである私が、

『堆肥は決まった通りに使わないと、畑が精霊に呪われますよ』

って言うのと説得力が違うのか、横着する人はちょくちょくいて、そのフォローにも私が出向くことは何度もあった。

そんなこんなで、キリンに会えるのは、夜、彼女が寝てしまってからってことが普通になってきた。

だから寂しい思いさせてるんじゃないかと思ったりもしたけど、ベントが言ってくれた。

「カリン、キリンは私とあなたの子です。あなたが忙しい時は私を頼ってください。私とあなたの二人でこの子を育てていくんです。それを忘れないで」

ってさ。くっそ~、相変わらずイケメンが過ぎるぞ、ベント。

しかもキリンってば、しっかり会社の方でもすっごく愛想良くしてるからかアイドル化してしまってて、みんなに可愛がってもらえてるおかげか、あまりぐずったりもしないそうだ。

しかも家では、エマがしっかりと彼女の相手をしてくれてる。

「エマ、エマ♡」

名前とかもちゃんと言えるようになったキリンは、彼女の名前を呼んで、いつも後をついて回ってるって。

だからエマもちょっと戸惑いながらも、キリンを受け入れてくれてた。

キリンにとっては、<お姉さん>と言うか、<もう一人のお母さん>って感じなのかもしれない。

もう少し大きくなってきたら節度を持った接し方を教えてあげないといけないと思うけど、今はまだ、ね。

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