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私があなたの<寄る辺>になる

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キリンだけじゃなく、私はこれからもたくさんの人に迷惑をかけると思う。ベントはもちろん、エマにだって。

人は生きてるだけでも誰かに迷惑をかけてるんだよ。誰にもまったく迷惑をかけずに生きられる人なんていない。

だからさ、私がかける迷惑を大目に見てくれてる人がいるんだからさ、感謝しなきゃって思えるんだ。

その気持ちを忘れたくないし、キリンにも伝えていきたいと思う。

『感謝の気持ちを忘れない』

ってさ、そういうのを考えたらできるんじゃないかな。できそうな気になるんじゃないかな。

そんなことを考えながらキリンを抱く。するとキリンは、私の顔をいじって、

「ケケケケケッ!」

って悪そうに笑った。いいよいいよ、今は思いっ切りそうやって楽しんでくれたらいい。私はあなたをこの世に送り出した張本人だ。その私があなたを全肯定しなくて誰がしてくれるって言うんだ。

世界中の人が認めなくたって、私だけはあなたを認めるよ。あなたを否定することは、あなたを生んだ私自身を否定するのと同じだと思う。

生きることは苦しい。死んだ方がマシだって思うことは何度だってあると思う。私もそうだった。こんな誰一人私を知る人がいない世界に放り出されて、生きてる意味があるのかと思ったこともあったよ。

だけどね、そんな世界でも幸せは掴めるんだよ。自分の方が世界を否定しなければね。自分が世界を否定すれば、たとえ生きていける余地があったって、それを示してはくれないんだよ。

愛してる。

愛してるよキリン。

私があなたの<寄る辺>になる。だから何も心配しないで。







だけど私は、この二年後、キリンとベントとエマを残して、一人で旅立つことになった。

なんて言ったら死んじゃうみたいだけど、そうじゃない。

要するに<仕事>だ。

この時点では、私にしかできない。と言うか、私しか引き受けない仕事だな。

まだ三歳にもならないキリンは連れていけない、そしてキリンを任せないといけないから、ベントも連れていけない、無期限の<単身赴任>。

数千人の人の命が掛かった、無謀極まりない仕事。

別に引き受けなくても、たぶん私が責められることはないと思う。キリンやベントやエマを人質に取られて命令されたわけでもない。

ただ単に、私が引き受けなきゃ、数千人の人が、いくつもの国の連合軍に取り囲まれて火をかけられて、街ごと<焼滅>させられるだけの話だ。

それは<戦争>じゃない。相手は軍隊なんて言えるものを持たない、どこの国にも属さない、どこの国からも必要とされていない、世界から見捨てられたかのような、<集落>に毛が生えた程度の街だ。それがこの世界から消えてなくなるってだけの話なんだ。

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