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残念なのは事実でも、恨んだりはしてないんだよ

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こんなこと言うと、きっと反発する人もいると思う。でもね、私は、ここでの戦争や奴隷制度に対してことさら口出ししないのと同じで、そういうものだと信じられていた昔にさかのぼって批判したいわけじゃないんだ。

ただ、かつてのやり方が非合理的非論理的だって分かったから廃れていったのに、その事実から目を背けて、

『やりにくい時代になった』

とか泣き言並べるような軟弱メンタルの人が根性論を持ち出すことには疑問しかないってだけなんだよ。

昔のやり方が否定されたのは、否定されるに足る合理的な理由があるんだ。そういうことを考えられない人が、一体、他人に対して何を教えるって言うの? どんな筋の通った根拠を持ってるって言うの?

気合いだ根性だって言うのなら、泣き言並べないでほしいんだよね。でないと説得力なんかまるでないよ。

私は基本的には、自分の拘りに対しては頑固なクセにそれ以外については本当に根性なしだから、気合いだ根性だとは言わないんだ。自分がそんなこと言われたって納得できないからね。

もちろん、キリンに対しても言わないようにしようと思ってる。

でもさ、気合いだ根性だとか言わなくたって、自分が『これだ!』って思ったことに対しては頑として譲らないっていう人はいるんだよ。そういうものに一直線に突き進む人はいる。

周りはその邪魔をしないようにすればいいだけなんじゃないかな。その上で、合理的で筋の通ったアドバイスをすればいいだけだと思う。



な~んてことを、キリンが生まれてからより一層、考えるようになってしまったな。この子に対して自分がどうあるべきかっていうのが今まで以上に考えさせられるんだ。

ダメな私がこの子に、

『生まれてきて良かった』

って思わせてあげるにはどうすればいいのかってさ。

それさえできれば、たぶん、私は自分の人生に満足できると思う。

だって、命を送り出したんだよ? その自分が送り出した命が『生まれてきて良かった』って思ってくれるんだよ? こんなすごいことはないよ。自分のすべてを注ぎ込んで世話をしてきた畑が大豊作になるのと同じだよ。

これ以上ないってくらいに認められたってことだと思うんだ。

だから私は努力を続ける。自分が納得できる人生を送るために。

他人や世の中の所為にはしてられない。私のやり方が通用しなかったのなら、それは私の責任だ。私の理解が足りなかったからだ。

ファルトバウゼン王国を追われたのだって、私が上手くやれなかったのが原因だ。だからファルトバウゼン王国を恨んではいない。

残念なのは事実でも、恨んだりはしてないんだよ。

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