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ただの変態扱いされそうだし

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『自分の表も裏も曝け出せる関係はあった方がいい』

と言っても、そんな相手なんて、多くてもせいぜい数人でいいんだろうけどね。じゃなきゃ、普段から誰に対しても裏表なく接するなんてしてると、根が下品な私の場合じゃ、ただの変態扱いされそうだし。

なんて、そんなこと言ってる場合じゃない。

陣痛の間隔が狭まってきて、もうほぼほぼ絶え間なく襲ってきてる状態だ。

現代日本の産院でなら、この辺りで分娩室に移って調べて、

『子宮口全開です』

とか言われて分娩が始まる感じなんだろうけど、医療技術がそこまでじゃないここでは、ホントに自然に分娩が始まるまで待つことになるだけなんだよな~。

自分で魔法でサポートしようにも、陣痛の所為で集中できなくて、迂闊に魔法も使えない。自分の脈拍とか血圧とかを把握するので手一杯。

だけど、比較するためのデータがないから、今の自分の状態が正常な範囲のそれなのかどうかが分からない。

くっそ~、情報がないってのは不安だよ……!

ただ、産婆さんは普通にしてる。

「さあ、そろそろだからね。頑張って」

何をどう頑張ればいいのかさっぱりだけど、ここまで来たら後には引けない。とにかく赤ちゃんをひりださなくちゃ終わらない。

「う~、が~!」

ほとんど獣の唸り声みたいのが勝手に口から出てくる。きっとまたとんでもないことを口走ったりするんだろうな。

「ごめん、ベント。私、これから獣になるから……! 覚悟しといて……!」

あらかじめ彼にそう断っておく。すると彼は、私をいつものように優しく見詰めて、手を握ってくれて、

「大丈夫。どんなになってもカリンはカリンだよ。愛してる」

だって。

か~! もう、イケメンが過ぎるだろ!! ちくしょーめ!!

だけど何だかホッとしたのも事実だ。なら、やってみせるしかない。

それに、私を産んだあの人だって乗り越えたことだ。ここで私がへこたれたら、あの人に負けることになる。そんなの、自分で自分が許せない。

「負けるか! 負けるか! 負けるかぁぁっ!!」

ベントに励まされ、<あの人>への、自分の母親への対抗心を燃料に、私は気力を振り絞る。

私を産んでおいてモノみたいに扱った母親と、私を厄介者扱いした父親と、ただの憂さ晴らしの道具にした兄を見返すために、あの人達を見返すためという理由を基に、命懸けの作業に挑む。

死ぬかもしれない。いや、正直、死んだ方が楽だとも思う。だけど死ねない。死ぬ訳にはいかない。ここで私が死んだりしたら、あの人達はきっと私を嘲笑う。

それだけは許せない……!!

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