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大人に言われたことを素直に聞けないなんてのは覚えがあるから

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バンクレンチと会えたし、メロエリータの取り敢えずの様子も分かって、私はなんだかホッとしていた。連絡が取れないのは寂しいけど、元気にやってくれてるんならそれでいいや。

叱られちゃったから仕事ももっと自重しよう。

そうだ。私でなくちゃ駄目ってわけじゃないんだ。私が持ってるのはあくまで<知識>。それを正確に伝えられれば、それをきちんと理解してくれてる人がいれば、その人に任せたって構わないものなんだ。

分かってるはずなのについついっていうのは、人間ならどうしても出てきてしまうクセなのかもしれないな。

セリス商会の社員達は、元々が現場の人達だから地の知識がある上にその知識を補足する程度のことを覚えるだけで済むから、呑み込みが早い。

ただ、気を付けないといけないのはその新しい知識に勝手な解釈を加えてしまうことだ。

いずれそれを基にして色々新しいことを見付け出していくにしても、やっぱり外しちゃいけない部分もあるわけで、今後はそういう部分で間違った解釈が広まらないように気を付けて行くことになるな。

実際、堆肥についても、

『もっとたくさん使った方がいいんじゃないか?』

っていう想いはついつい頭をもたげてきちゃうみたいで、それを抑えるのが目下の課題かな。

『言われた通りにしないと精霊に呪われる』

と言っても、特に若い世代だとその辺りの実感がまだ乏しい人もいて、半信半疑だったりすることもあるんだよね。

まあ私も、大人に言われたことを素直に聞けないなんてのは覚えがあるから、それ自体を責めるつもりはないけどさ。

それに、『常識を疑う』ってのは、物事を深く追求するには必要なんだよね。根拠のないただの迷信を打ち破っていくのも結局はそういうことなんだし。

まずは疑ってみて、それが本当に論理的に正しいのか、合理的なのか、筋が通ってるのかっていうのを自分で確かめるっていうのは大事だと私も思う。

その上で、ちゃんと意味のあることなら、科学的に合理的なことなら、摂理に沿ったことなら、引き継いでいけばいいし、まったく合理性のない、むしろデメリットしかないようなことなら改めていけばいいわけで。

この世界でも、かつては<生贄>とか<人柱>といったことが普通に行われていたそうだ。

だけどさすがにそれは実際には意味がないということで否定されてきた。

ここの人達だって、地球と同じでちゃんと自力でそういうことを気付くことができる。私はほんの少しだけ彼らの先を行ってるだけに過ぎないということを忘れないようにしなくちゃと自分に言い聞かせる。

でないと私自身が思い上がってしまいかねないからね。

そして私の知識が常にこの世界での正解になるとは限らない。私自身が、私の<常識>を疑っていかなきゃと思ってるんだ。

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