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そんな彼に報いることができそうで、私もホッとしてた

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今回、戦争のことに触れたのは、ここが別にただただ平和な世界じゃないっていうのを改めて再確認するためなだけで、確かに大使に言う通り、ガルフフラブラ王国にまでは直接的な影響はなかった。

ただ、間接的には影響がまったくなかったわけでもない。

今回の戦場が、物流の要となってた街道を跨ぐ形になってしまってたことで、そこを通ってやり取りされてた物品の一部が届かなくなってしまってたんだ。

そうなると、外国産の食材とかも一部が入らなくなり、食堂とかのメニューにも影響が出たそうだ。

地球では割とその辺りは、生鮮食品の流通が難しかった頃には、遠く離れた場所での戦争でそれが届かなくなるなんてこともそんなになかったかもしれないけど、なまじ、魔法のおかげで食品の保存技術だけは妙に発達してるこの世界ならではの話なのかな。

とは言え、本当に生活に直結するような必需品じゃないから、

「え~? あれ食べられないのかよ……」

などという落胆の声があちらこちらで聞かれただけだ。

ちなみに私が今、農業指導をしているこの村では、モグラレンコンの栽培も始めたこともあって、食糧そのものにはまるで困ってなかったけどね。

だから安心して次の作付けの準備を行えてる。

前の村ではそれに加え、甘イモの収穫が重量比で例年の百三十パーセントとなって、税として納める甘イモを確保してもなお、自分達が口にできる分が少し残ったそうだった。

ただし、それはあくまで、作物の出来を考慮して暫定的な減免措置を受けてたからであって、次からは収穫に合わせて徐々に他の農地のそれに近付けていくことになるらしい。

まあその辺も当然のことなのかな。でないと、今度は他の農地の人達に不満が生まれることになるだろうし。

<税の不公平感>ってやつだ。

地球にいた頃は私はまだ社会人じゃなかったからあまりその辺の実感はなかったけど、周りの大人達がよくそれで愚痴をこぼしてたのを覚えてる。

むしろ、税の減免措置があっただけでも、合理的な考え方をしてるんだって分かる。サイサスリスト氏は優秀な<監督役>だよ。決して甘くはないけど、かと言って道理をわきまえてない訳でもない。彼としてもギリギリの選択だったんだろうなって分かる。

そんな彼に報いることができそうで、私もホッとしてた。

まあ、その分、<ウンチの堆肥化>っていう見返りも得たけどさ。

私が結果を出したことで、彼も決断しやすかったんだろうな。そして、ここでの堆肥化が上手く軌道に乗れば、それを実績として他の地域でも話を持っていきやすいだろう。

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