何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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現時点では私が何か損害を被ったわけでもない

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『乱暴な手段で乗っ取ったわけじゃない』

『社員の殆どはそのまま雇ってる』

大使のその言葉に、私はホッと胸を撫で下ろしてた。会社が乗っ取られたというのはもちろんショックだけど、社員や従業員が無事ならそれでいい。

でも、念の為、

「リレも無事なんでしょうか?」

と問い掛けると、

「はい。それどころか、今は正式にアリエ商会の代表となっているようですね」

っていう答えが。

さすがにそれには、

「え?」

となってしまったけど。まさか元奴隷をそのまま代表にだなんて……? いったい、何を考えてるの……?

もちろん喜ぶべきことなんだけど、でもちょっと普通じゃないし。

「詳しい情報が入ったらまた教えてください」

「はい、承知しました」

そう言ってもらえて、まだ胸はざわざわしてるものの、私は少しだけ落ち着いて家に帰ることができた。

そして、リレに手紙を書く。なるべく詳しい事情を教えてもらいたくて。

すると、私が手紙を送ったのと入れ違いにリレから次の手紙が届いた。そこには、

『カリン様へ。

先日の手紙では慌てて書いたので詳しいことが書けませんでした。

今は少し落ち着きました。

こちらは、一部、反発して辞めてしまった人もいますけど、従業員全員、無事です。

仕事もこれまで通りです。

でも、会社の名前はアリエ商会からトゥルカ商会プリエセリアス支社になって、なぜか私が支社長ということにされてしまいました。

だけどトゥルカ商会の代表は優しい人で、良くしてもらってます』

と書かれてた。

正直、その文面をそのまま信用することはできない。そう書かされてる可能性だってあるし。

それでも、無事だっていう点では、大使の方に入ってる情報でもそうらしいから、そこについては安心していいのかな。

大使の方に入ってる情報もどこまで正しいのか分からないにしても、元奴隷であるリレが無事で、しかも支社長に抜擢されたなんて情報で虚偽を入れたところで向こうが得をするとも思えないし、その辺りは信用していいのかもしれないのか。

にしても、トゥルカ商会ねえ……何が目的なんだろう。

いや、会社だっていうことなら当然、利益を上げるのが目的で、アリエ商会が大きな利益を上げてるからそれを自分達のものにしようとするのは普通だろうから、別に変じゃないとは思うけどさ。

基本的にファルトバウゼン王国とは国交がないムッフクボルド共和国内の会社であるアリエ商会の利益については、普通にしてたら私のところには入ってこないんで、現時点では私が何か損害を被ったわけでもない。

一応、何かの形で私に役員報酬として支払うためにプールはしてくれてたらしいけど、それがトゥルカ商会に吸い上げられたとしても別に惜しくもないからなあ。

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